御岳山の野草 [植物観察]
9月上旬、舎人公園ボランティアの有志がレンゲショウマの自生(群生)で日本一の御岳山に登りました。開花のピークは過ぎていましたが、なお無数の開花を観察できました。舎人公園でレンゲショウマの開花に挑戦していますが、開花させるのは苦労を要します。群生地の生育条件は、山林で、ほとんど日陰で多湿・低温で傾斜地のため排水は良好です。足立区でこのような群生地の生育条件を再現することは不可能です。何とか木陰で直射日光を遮り、過乾燥にならないように管理し、数本の開花に成功しました。
御岳山で観察された野草で開花していたものは、アカソ、ガンクビソウ、キレンゲショウマ、シュウカイドウ、タマアジサイ、ツクバネソウ、ツリフネソウ、フシグロセンノウ、レンゲショウマ、ヤマジノホトトギス、オクモミジハグマ、ヤブタバコ、ソバナ、キヌタソウ、クサノオウなどでした。これらの幾つか紹介させていただきました。なお、野草の解説は花・緑文化士の清水猛さんが同行され、お願いしました。
アカソ(赤麻):イラクサ科
ガンクビソウ:キク科、頭花を煙管の雁首に例えた。
キレンゲショウマ:ユキノシタ科でキンポウゲ科のレンゲショウマとは別種。蕾、花がレンゲショウマに似ています。
シュウカイドウ(秋海棠):シュウカイドウ科:観賞用が野生化。
タマアジサイ(玉紫陽花):ユキノシタ科、蕾が玉。花はガク紫陽花に似ていました。
ツクバネソウ(衝羽根草):ユリ科、羽根突きの羽子(ムクロジの実)に似た果実をつけます。
ツリフネソウ(釣舟草):ツリフネソウ科、花が舟に似る。黄花もある。ホウセンカもツリフネソウ科で近縁種。
フシグロセンノウ(節黒仙翁):ナデシコ科、節は太く黒っぽい。
レンゲショウマ(蓮華升麻):キンポウゲ科、お目当ての花。花は蓮華のように美しいのですが、果実は水牛の角のように鋭い(写真右上)。写真をクリックして拡大して見て下さい
ヘビウリが舎人公園で稔る [植物観察]
ヘビウリが舎人公園で見事に結実しました。8月~9月上旬まで楽しめそうです。蛇がぶら下がっている感じですが、怖がらないで観察してください。
ヘビウリ(蛇瓜):ウリ科カラスウリ属ウリ科の蔓草本。インド原産で日本に明治の末に渡来。花は雌雄同株で、雄花は房状、雌花は単生し、ともに花冠の径は5cm(裂片)位で白色5裂し、カラスウリ、キカラスウリと似ています。
果実が細長く、長さ0.3~1.0m、色は緑色で縦に白いスジが入ります。熟すと赤くなります。ヘビのようにくねくねと長く伸びるので、名前がつきました。写真で説明させていただきます。クリックすると拡大できます。
雄花:房状に着き次々と咲きます。
雄花:カラスウリの花にそっくり。
雌花:花の延長に小さな果実(毛が着生)がついている。
雌花:雄花にそっくりですが、花の中心部(雌しべで)区別。
蛇瓜:まだこれから大きくなります。
大分大きくなりました。
キカラスウリの雄花です。
ヒルザキツキミソウの結実と雨滴散布 [植物観察]
ヒルザキツキミソウの結実と雨滴散布
ヒルザキツキミソウは日本では結実しないとされています(保育社「原色日本帰化植物図鑑」、山と渓谷社「野に咲く花」)。朝日新聞社「世界の植物」、全国農村教育協会「日本帰化植物写真図鑑」などには結実の記述はありません。インターネット検索ではヒルザキツキミソウの種子は出来るとの記述はありますが、日本で結実したのか、結実の具体的な種子証明は見つかりませんでした。日本で発売されているヒルザキツキミソウの種子は中国からの輸入です。
結実した果実(さく果)発見の糸口
舎人公園ボランティア花壇の一角に数年前からヒルザキツキミソウの群生地があります。本種は匍匐茎を伸ばして増殖するのですが、匍匐茎の届かないスポットでも個体数が増加していることに気がつきました。このことは、種子増殖しか考えられません。
ヒルザキツキミソウの開花期(6月下旬)に広く一面に蔓延った(約150平米)所々に結実した株を見つけました。その頻度は非常に少なく、注意して見ないと見過ごすくらいです。開花した大半は結実しないで脱落してしまいます。群落だからこそ見つけることができたのでしょう。
下記に観察記録写真を解説させていただきます。写真をクリックし拡大して下さい。
ヒルザキツキミソウの群落。
ヒルザキツキミソウの雨滴散布の説明
吸水処理前の果実。
吸水処理後の果実:果皮が4つに開く(前の写真と同一固体)。
吸水により、果実が開き種子がぎっしり詰まっていることを確認。
種子が少し雨滴流出している。
アカバナユウゲショウの果実(果皮の先端がヒルザキツキミソウのそれより丸い味を帯びる)。
アカバナユウゲショウの雨滴散布 [植物観察]
アカバナユウゲショウの雨滴散布
発見の出会い
ある雨の日、いつもの道草をしている時、アカバナユウゲショウの茶色の可愛らしい幾つもの果実(さく果)が4つに裂けて開いているのを見つけました。持ち帰るとそれらの果実は元通りにふさいでいました。ボタニカルアートを描くため虫やゴミを落とすため水道で流していたら、それらの塞いでいる果実が見る見る開いてきました。なんと不思議な現象でした。心は凄くわくわく、楽しい出来事でした(ボタニカルアーティストH.O記)。
何故雨の日に果実が開くのか?
多くの果実は晴れると開き、雨では閉じるものが多いのに何故好んで雨の日に開くのか?
検証:複数着生した完熟果実(さく果)に水を何回か降り掛けてみた。1~2分経つと丸く閉じていた果実がゆっくり4つの果皮に裂け、あるものは中から1mm以下の小さな種子がぎっしり詰まっていました。さらにあるものは、種子が半分くらい、種子が少し、種子が全く無い果実がそれぞれ観察されました。これらのことは、種子の詰まった果実が雨で開き、雨によって種子がながされ、雨が止むと閉じ、また雨で開き種子を流し、また閉じる作用を繰り返すのです。開いた果実の種子は容易に水滴で流れます。強く長い雨では、一度で種子は洗い流され、かなり遠くまで伝播するといえます。最近、舗装道路の割れ目などで美しく咲いたアカバナユウゲショウが時々見られるのは雨滴散布によるためでしょう。
種子が沢山詰まっている果実はその先端の棒(果実の軸)が無いか短い。開閉が繰り返されるとその棒が相対的に長くなります。何故雨の日に果実が開くのか?わかりませんが、本果実(種子)は、下記散布様式、くっつきむし、果実の破裂、風の利用などの要素を持たないための工夫(進化)ではないでしょうか?
ヒルザキツキミソウは日本では結実しないと有名な図鑑に記述されていますが、結実します。結実した果実はアカバナユウゲショウと同様な雨滴散布の行動を示します。ヒルザキツキミソウの結実・雨滴散布については次回本ブログで取り上げます。
関連記事種子の散布様式
散布様式は様々で、単一のものから複数のものがあります。身近な例としてスミレは閉鎖花を含めて自動散布により弾き飛ばされ、一部アリによって運ばれます。
動物散布(くっつきむし、被食型)、自動散布(カラスノエンドウ、スミレ、カタバミなど)、振動散布(タネツケバナなど)、風散布(タンポポ、ガガイモなど)、水流散布(カサスゲ、ハマダイコンなど)、水滴散布(ネコノメソウ、アカバナユウゲショウ、ヒルザキツキミソウなど)、重力散布(果物など)。
写真の判り易い説明(以下の写真を見て下さい:クリックして拡大して下さい)。
アカバナユウゲショウのボタニカルアート
吸水前の果実(さく果)が(左)吸水すると右の写真のように果実が4つの果皮に裂けて開き種子がむき出しになる。このような状態で雨に打たれると種子が流出して散布される。
濡れて開いた状態の果実:1mm程度の種子がぎっしり詰まっていました。
同じく吸水して開いた果実:撮影坪内英昭氏。
種子が雨滴流出した果実。
読売文化センター野外講座・石神井公園 [植物観察]
月一度の表記講座”花と緑をもっと知ろう”が今月石神井公園で開催されました。石神井公園で目に留まった植物を紹介させていただきました(写真はクリックして拡大して下さい)。
観察会の風景:右端が綿引講師
ムラサキオオハンゲ:カラスビシャクの大型といったところ。
ヤブジラミ:舎人公園にも群生。果実が虱のようにくっ付く、くっつき虫。
左 コクサギ:葉が二枚ずつの互生で珍しい植物(拡大でよく見えます)。
右 サルトリイバラ:トゲに猿が引っかかるとか?
上左 ヤブタバコ:葉がタバコに似ている。上右 コブナグサ:黄八丈の原料、舎人公園に生育していましたが、今年はまだ生えてきません。下左 シロネ:シソ科で太い白い根が特徴。下右 ハンゲショウ:見事な群生でした。上部の葉の半分が白くなる。ドクダミの仲間。
白花カラスノエンドウ [植物観察]
5月に舎人公園で、白花のカラスノエンドウ(ヤハズエンドウ)を見つけました。全国的にみればそれほど珍しくはないのですが、舎人公園では初めての発見でした。
その他、白花で比較的珍しいものとして、白花のムラサキツメクサ(セッカツメクサ)、同アカバナユウゲショウ、同ヒメオドリコソウ、同ツユクサを見つけ舎人公園野草見本園で保護しています。
写真で紹介させていただきました(拡大出来ます)。
白花カラスノエンドウ
これまで見つけた白花のツユクサ・アカバナユウゲショウ・
ヒメオドリコソウ・ムラサキツメクサ。
上の写真で白花のアカバナユウゲショウの花がやや赤っぽい
ので、新たに白花のアカバナユウゲショウの写真を追加しました。
舎人公園でコンニャクが開花 [植物観察]
今月5日に本ブログに投稿したコンニャクの花の記事に続いて、特大の花が見事に開花したので紹介させていただきました。昨年4年物で花が咲いたコンニャクに、今年も花芽が伸びてきました。もう一度楽しめそうです。写真はクリックして拡大して見て下さい。
見事に咲いたコンニャクの花:高さ1mあまりで、仏炎苞の直径は20cm強。
強
コンニャクの花序:悪臭を放つので、金蠅などが集まっていました。雌花群は雄花群の下に着生しています(下の写真)。
コンニャクの雄花群と雌花群(雌花群は一部しか写っていません)。
高尾山の春の野草 [植物観察]
恒例の講座”花と緑をもっと知ろう”が4月高尾山の第一登山コースで行われました。あいにく雨で客足は少なく観察には最適でした。鶯と蛙の鳴き声がとてもいい響きでした。
平地ではあまり見られない高尾ならでの野草の幾つかをカメラに収めました。以下、紹介させていただきます。クリックすると拡大できますが、ピントが甘いようです。
上段左:アオイスミレ、右:スミレサイシン
下段左:ナガバノスミレサイシン、右:タカオスミレ
上段左:ヒカゲスミレ、右:ウバユリ
下段左:キケマン、右:クサイチゴ
上段左:シャガ、右:セントウソウ
下段左:ツクバキンモンソウ、右:ミミガタテンナンショウ
上段左:ヤマネコノメソウ、右:ユリワサビ
下段左:ヨゴレネコノメ
舎人公園でコンニャクの花が開花 [植物観察]
舎人公園の野草見本園にコンニャクの花が間もなく咲きます。昨年も咲いたのですが、今年の花は見事なものとなりそうです。
昨年、赤ん坊の頭ほどの四年物と三年物のコンニャク玉を植えました。四年物は開花しました(写真2)が、植え付けが遅かったせいか不完全な花となりました(開花した四年物のコンニャクは枯死したようです)。三年物のコンニャクは開花しないで生育し続け、晩秋になってもそのまま堀り上げないで越冬させたところ、この4月末に筍状の花芽が伸びてきました(写真3)。この花芽(蕾)が間もなく 開花します。コンニャクの花は開花前に収穫するので、産地でもなかなか見られないようです。コンニャクの花はお世辞にも美しいとは思えませんが普段あまり目にしないので興味深いと思います。香りは臭いとされています。
写真1: 昨年植えたコンニャク芋(クリックして拡大して見て下さい)
写真2:昨年舎人公園で咲いたコンニャクの花(不完全開花)
写真3:間もなく開花するコンニャクの花芽(細長く伸びた筍状のもの)
2012年5月2日撮影(携帯電話で)、周囲に群生しているのはニホンハッカ
冬の薬用植物園 [植物観察]
月一回の読売文化センター野外講座”花と緑をもっと知ろう”が2月上旬都立薬用植物園で開かれました。目についた幾つかの植物を紹介させていただきました。印象が強かったものに、タラヨウの葉の裏に書かれた東日本大震災を激励する文字、冬でも枯れ葉が落ちないヤマコウバシ(落ちないことから受験のお守りにされる)があります。
タラヨウ:モチノキ科モチノキ属。葉の裏に字が書けるので、ハガキの木とも。東日本大震災ガンバレ、負けるなと書いてあります。戦国時代に伝達手段に使用されたようです。
ヤマコウバシ:クスノキ科クロモジ属。冬枯れた葉が落ちないで残るので受験生のお守りとして利用されています。
ケシ:美しいケシの花に興味のある方は5月に当園で見れます。厳重に管理されています。写真の植物はケシの幼植物。
アネモネ:開花直前でした。
ザゼンソウ:開花まであと少しでした。残念!
セイヨウクモマグサ:赤と白の花がきれいに咲いていました。
セツブンソウ:まさに、節分の頃に開花していました。花は美しいです。
観察会の風景:右端の男性は綿引講師。
石神井公園での観察会 [植物観察]
石神井公園での観察会
昨年12月、恒例の読売文化センター(北千住)の講座”花と緑をもっと知ろう”が開催されました。冬場で見どころは少ないのですが、目にとまった幾つか紹介させていただきました。
沢山のドバトが木の実(エノキの赤い実)を食べていました。ドバトが木の実を食べるところを見たのは初めての経験でした。写真は逆光で申し訳ありません。
池で見られた水鳥:写真左上からカワウ、ゴイサギ、アオサギ、マガモ。
東京23区でカワセミが常時見られるのは珍しい。ただし、カワセミが飛来する工夫がしてあります。
上段左:ヒヨドリジョウゴ、同右マユミ。下段左ヤブタバコ、同右観察風景。
舎人公園で植物観察会 [植物観察]
今年の皇帝ダリアの開花は、11月中下旬頃と昨年より早く咲きそうです。今年は台風の影響を受けましたが、草丈が3m~4mになり本数も多く見栄えがするでしょう。
観察会風景。
開花が待ち遠しい皇帝ダリア、今年は特別豪勢です。
アレチヌスビトハギ
ジュウニヒトエ
ニホンハッカ
ヒメミカンソウ
ミゾソバ
メリケンガヤツリ
ヤマジノホトトギス
読売・日本テレビ文化センターの植物観察会 [植物観察]
恒例の観察会“花と緑をもっと知ろう”が向島百花園で開催されました。
目に留まった植物の幾つか紹介させていただきました(写真をクリックし
拡大して下さい)。
観察会の様子
アサザ(浅沙、阿佐佐):ミツガシワ科アサザ属の多年草。
環境省準絶滅危惧種。植木鉢に植わっており、小振りでしたが花が奇麗でした。アサザも水生植物特有の葉から根に酸素を送る通導組織が発達しており、根に送られた酸素の一部は根からその周囲に放出されます。その結果アサザの根の周辺で生息している生物の種類や数が多くなるという研究結果があります。ジュンサイと異なり食用にされることは少ない。
トウゴウギク(東郷菊):キク科オオハンゴン属又は学名からルドベキア、ルドベキア属)の多年草。学名Rudbeckia fulgida。明治の末、東郷平八郎がロンドンのキュー植物園から種を譲り受けて百花園にもたらされ、昭和18年にトウゴウギクと命名されたようです。園芸植物の草花ルドベキアは舎人公園で栽培されていますが、トウゴウギクと見た目に区別できません。因みに、同じ仲間のオオハンゴンソウは空き地などで蔓延り、環境省指定特定外来生物に指定されています。
市販のルドベキアにはヒルタ種(R.hirta)の一年草(アラゲハンゴンソウ)とトウゴウギクのようなフルギタ種(R.fulgita)やオオハンゴンソウのラキニアタ種(R.laciniata)、トリロバ種(R.triloba)の多年草があります。
トウテイラン(洞庭藍):ゴマノハグサ科。花の色と粉白色が中国の美しい洞庭湖に例えられた。隠岐諸島などに自生するが、園芸植物として植えられている。
ナンバンギセル(南蛮煙管):ハマウツボ科ナンバンギセル属の一年草。 イネ科やカヤツリグサ科など単子葉植物に寄生する完全寄生植物。ススキ、イネ、サトウキビ、ミョウガ、ギボウシ等。オカボ(陸稲)に寄生した被害が報告されている。花が南蛮煙管に似ている。ヤセウツボとともに比較的何処でも見られる。
ハッポウワレモコウ(八方吾亦紅):バラ科ワレモコウ属の多年草。 向島百花園で咲いていたワレモコウに似た草花が、名前の表示がないので断言は出来ませんが、見た目で花穂がワレモコウよりはるかに長く、カライトソウより短く細いので、カライトソウとワレモコウの交雑種であるハッポウワレモコウではないかと推定しました。名前の由来は北アルプスの八方尾根で発見されたことによる。
ヘビウリ(蛇瓜):ウリ科カラスウリ属の一年草。 蛇のような形をした瓜ですが、瓜といってもメロンやマクワウリ(キュウリ属)とは異なりカラスウリの仲間で、花もカラスウリやキカラスウリのような白くて芸術的な花を咲かせます。地植えにするととぐろを巻いた蛇のような形になり嫌がられるそうです。食べられますが、人気がないとか。インド原産。舎人公園にも植えてみたいと思っています。バショウ(芭蕉):バショウ科バショウ属の多年草。中国原産とされていますが、英語名ジャパニーズ バナナ(japanese fiber banana)。バナナもバショウ属で非常によく似ているますが、バナナは食用で、バショウは茎に見える葉鞘の繊維で芭蕉布をつくります。名の由来は学名Musa basjooから。芭蕉の意味は不明。雌雄異花で、両花の開花時期がずれるので(自家受精防止)一本の固体では結実し難いのです。果実は食べられるが美味しくないそうです。生薬芭蕉。松尾芭蕉は本種に因む。
読売日本テレビ文化センター(北千住)講座が開催 [植物観察]
月一回の上記講座(野外)“花とみどりをもっと知ろう”が開始されてから、約8年にもなりました。今回は小石川植物園で開催されました。
普段見ることの少ない美しい花の紹介をさせていただきました。
観察風景:右端は綿引講師
オウゴンオニユリ(黄金鬼百合):オニユリの黄色種で見る機会の少ない百合です。オニユリだけに着生する“ムカゴ ”が葉の付け根で見られます(写真をクリックして拡大するとよく見えます)。
ダンドク(檀特):カンナ科カンナ属の多年草。カンナ(園芸種)の原種とされています。
ナツザキツツジ(夏咲き躑躅):ツツジ科ツツジ属の多年草。北米原産。ツツジで夏咲くのは珍しい(6~8月)。秋の紅葉も美しい。冬落葉。
ヒゴタイ(平江帯、肥後躰):キク科ヒゴタイ属の多年草。
環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類(VU)。原産地は朝鮮。あちこちで見られる欧州原産の同属の園芸種ルリタマアザミ(瑠璃玉薊)そっくりです。
トマトの絵描き虫(トマトハモグリバエ) [植物観察]
トマトハモグリバエはキュウリ、メロン、トマトに寄生する害虫です。成虫(ハエ:2mm前後)が葉の中に産卵し、孵化したうじ虫(幼虫:2mm位)が葉中を食い進みます(食べたスジ状の跡を絵に見立てた)。この時期でしたらスジ状の跡の先端に幼虫がいる可能性があり、膨らみを指で潰すと殺せます。発育が進むと葉の外に出て落下して土中で蛹になり、羽化します。本種は中南米原産で、国内では沖縄県で平成11年初めて確認された比較的新しいハモグリバエです。絵描き虫(ハモグリバエ・ハモグリガ)には色々な種類があり、ほとんどの植物に寄生します。
防除:手でつぶす。黄色に誘引される性質を利用して黄色い粘着板を設置(市販)。最後の手段は浸透移行性の農薬の散布になります。しかし、被害が甚大でなければそのまま生育可能です。(参考情報:高知県病害虫防除所資料)
エカキムシの被害を受けたミニトマト (クリックして拡大して見て下さい)
多摩森林科学園の植物 [植物観察]
月一回の読売・日本テレビ文化センター北千住の教養講座“花とみどりをもっと知ろう”が多摩森林科学園で開催されました。講師は花・緑文化士の綿引寿三郎さんと私ですが、私は脇役です。以下に目にとまった植物を紹介させていただきました(写真はクリックして見てください)。
観察会風景
アワフキムシ(泡吹虫・写真左上):アワフキムシの幼虫は、多年草の維管束(導管)に口針を刺し、導管内の微量の養分を栄養とするため、大量の水分を必要とし、泡として排出し、その中で暮らします(導管には篩管と異なり栄養分が極めて少ない)。泡(巣)は幼虫の保護作用があります。写真はカラムシに寄生していました。導管から養分を吸い取る昆虫にセミや稲害虫のヨコバイがあります。
イヌビワ(写真右上):クワ科イチジク属の落葉樹木。雌雄異株。名の由来は、果実が枇杷(バラ科)に似て味が劣るからとありますが、私は、果実はイチジクに似ていると感じます。食べられます。
ヤブレガサと虫こぶ(写真左下):虫こぶに関する詳しい記述は本ブログで取り上げましたのでご参照下さい(虫こぶのお話:2009年5月2日)。虫こぶは主に昆虫が植物に産卵や寄生することによる組織の異常肥大化したもので、実に多くの植物で見られ、569種以上1400種類以上が知られています。今まで見たもので、最も興味のある虫こぶは、イスノキのイスノキイチジクフシ(アブラムシの寄生)です。イチジクの実のような形で、大きいものでは拳大になります。穴が一箇所開いていて笛に使えます。エゴノネコアシも面白い。今回のヤブレガサの虫こぶは、タケウチケブカミバエの産卵(茎)によるもので、ヤブレガサクキフクレズイフシと称し、虫こぶの中に1mm位の白い幼虫がいました。初めての観察でした。写真に写っていますが、美味しいクサイチゴが沢山実っていました。
コクサギ(写真右下):ミカン科コクサギ属の落葉低木で臭みがある。特徴として、葉の配列が面白い。二枚ずつの互生となっています(写真1,2-3,4-5,6)。葉を煎じた汁は殺虫剤になる。
タチシオデ(立牛尾菜・写真左上):ユリ科シオデ属の山野に生育する多年草。ボランティアの方から一株頂き舎人公園野草見本園に植えました。若葉は食べられ、花は黄緑で放射状に咲く。
ミゾソバ(溝蕎麦、ウシノヒタイ・写真右上):タデ科タデ属の一年生草本。以前は水田の用水路(小川)の側溝が土で、一面に繁殖した姿が見えましたが、現在ではコンクリート護岸に変化し、すっかり姿を消してしまいました。見た目は蕎麦に似ていますが、花は赤できれい。私の子供のころは、ギャールグサと呼んでいました。舎人公園にもあります。
フサザクラ(房桜、タニグワ・写真左下):フサザクラ科フサザクラ属の落葉高木。花が房になってつく。花は珍しく、花弁も萼がなく多数の雄しべが垂れ下がる。
枝垂れ染井吉野:オオシマザクラとシダレザクラの交配種。写真をクリックすれば、枝垂れたところが見やすいです。花は染井吉野似だそうです。学名:Cerasus × yedoensis Perpendens。
向島百花園の野草 [植物観察]
向島百花園の野草
向島百花園で春の野草を観察しましたが、都市部で山野草が多く見られるのは珍しいと思います。目に留まったものとして、アワモリショウマ、バイモ、オキナグサ、キョウガノコ、サキゴケ、トモエソウ、ミツバチグリ、ムサシアブミ、ヤブレガサ、バショウがあります。紹介させていただきます。 その他、コンニヤク、カラタネオガタマが開花していました。
アワモリショウマ(泡盛升麻):別名泡盛草。ユキノシタ科チダケサシ属の多年草。日本原産。白い小さな密の花を泡に見立てた。アスチルベは園芸種。
バイモ(貝母):別名編笠百合、天蓋百合。ユリ科バイモ属の多年草。花の形が編み笠に似る。薬草・毒草。果実の形が面白い。球根が二枚貝に似ている。
オキナグサ(翁草):キンポウゲ科オキナグサ属の多年草。白く長い綿毛の果実を翁に例えた。薬草・毒草。絶環境省レッドリスト・滅危惧Ⅱ類。
キョウガノコ(京鹿子):バラ科シモツケソウ属の多年草。シモツケソウの仲間。語源は京都の鹿の子絞り。日本産の園芸種。
サギゴケ:ゴマノハグサ科サギゴケ属の多年草。白花をサギゴケ(白鷺に見立てた?、紫花をムラサキサギゴケ。
トモエソウ(巴草):オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草。語源は黄色の花弁が捩れて巴(卍)状になるから。花はビョウヤナギに似る。
ミツバツチグリ(三葉土栗):バラ科キジムシロ属。ツチグリに似ているが葉が三つ葉。根茎は食べられない。ツチグリの根茎は紡錘状で焼くと栗のような味がし、食べられる。花はヘビイチゴそっくり。実は食べられない。
ムサシアブミ(武蔵鐙):サトイモ科テンナンショウ属の多年草。やや湿った林地に自生するが、舎人公園で栽培を試みています。似た花に、ユキモチソウ、ウラシマソウ、マムシグサ、ザゼンソウ。
ヤブレガサ(破れ傘):キク科ヤブレガサ属の多年草。山林に自生し、新葉が土から出た状態がやぶ破れ傘のように見える。
バショウ(芭蕉):バショウ科バショウ属の多年草。葉、花、果実ともバナナそっくり。バナナより耐寒性があり、東京では露地栽培が可能。食用には適さない。芭蕉布(葉鞘の繊維)の原料。
百花園から見たスカイツリー
珍しい野草 [植物観察]
珍しい野草
最近、植物観察中で普段見かけない珍しい野草を見つけました。
1. ヒメオドリコソウ3種類
2. タチイヌノフグリ2種類
3. シロバナ・カントウタンポポの雑種
写真はクリックすると拡大されます。
ヒメオドリコソウは上部の葉・茎が赤紫色、花色は淡紅色ですが、上部の葉・茎色が緑で花色が白色のものがあります(本ブログで報告済2010年4月:シロナバヒメオドリコソウが舎人公園の局所群生)。
この度見つけたものは、上部の葉・茎色が緑で花色が淡紅色です。日陰~半日陰環境で生育したもので上部の葉色が緑で花色が淡紅色となる場合がありますが、これらは、日なたに移せば上部の葉色が赤紫色、花色は淡紅色と変化します。しかし、日当たりの良い環境で生育した場合でも上部の葉・茎色が緑で花色が淡紅色のものも存在しました。
タチイヌノフグリ : タチイヌノフグリの青・赤花が、同じ場所に咲いていました。最近、この種の赤花がたまに見られます。
シロバナ・カントウタンポポの雑種?:カントウタンポポとシロバナタンポポが自生している場所に、一株だけそれらの雑種を思わせるタンポポを見つけました。カントウタンポポの雌蕊にシロバナタンポポの花粉が飛んで受精したのではと推定しました。その根拠は、カントウタンポポとシロバナタンポポは別種なので交雑しないと考えられていましたが、現に、セイヨウタンポポとカントウタンポポの交雑種が確認されていること、一株しか観察されなかったこと、よく似たキビシロタンポポ、ウスギタンポポとは考えにくいなどです。
ヤセウツボがアベリアに群落寄生 [植物観察]
ヤセウツボがアベリアに群落寄生
完全寄生植物ハマウツボ科ハマウツボ属のヤセウツボが、アベリア(スイカズラ科ツクバネウツギ属、別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)に無数寄生しているところを見つけました。ヤセウツボはムラサキツメクサなどのマメ科、セリ科、キク科に寄生すことは広く知られていますが、樹木であるアベリアに寄生したという報告は、Web.検索ではヒットしませんでした。大変珍しいと思い、投稿させていただきました。興味のある方は、ご連絡下さい。場所は舎人公園サービスセンター西側で、トラックターミナル敷地とテニスコートの境界通路沿いです。舎人公園では、あちこちでムラサキツメクサやシロツメクサに寄生しており、また、ハルジオンにも寄生しています。
ヤセウツボのことは、本ブログでも詳しく取り上げています(2008年5月18日)。
手前のアベリアの根元には、無数のヤセウツボが繁殖しています。矢印向こう側のコデマリには全く見られません。
アベリアに寄生しているヤセウツボ。アベリアの株は多数ありますが、全株に(写真)異常な繁殖が見られます。近隣のアベリアには殆ど全株に寄生がみられますが、隣接して生育しているユキヤナギ、ビョウヤナギ、オオムラサキなどには全く寄生していません。寄生しているアベリアの直ぐ隣にコデマリの株があっても、これには全く寄生が見られません。
アベリアに寄生しているヤセウツボ。アベリアの根にヤセウツボの根が進入しているのが分かります。クリックして拡大して見てください。
アヤメ・カキツバタ・ハナショウブの簡単な見分け方 [植物観察]
アヤメ・カキツバタ・ハナショウブの簡単な見分け方
アヤメの仲間はたくさんあります。これらの園芸種も多く、花の色や形も他種多様です。原種、園芸種ともに共通するアヤメ、カキツバタ、ハナショウブの簡単な見分け方を紹介させていただきました。
字が小さいのでクリックして拡大して見てください。
田島ヶ原桜草公園観察 [植物観察]
恒例の読売・日本テレビ文化センターの講座“花と緑をもっと知ろう”、がはや、七年の継続となりました(月一回)。今回は、さいたま市桜区田島ヶ原桜草公園(特別天然記念物)で開催され、広い面積のサクラソウ自生地の野草を観察しました(4月)。足立区では珍しい野草を幾つか紹介させていただきました。絶滅危惧種、準絶滅危惧種が保護されていました。夏には芦原に変化し、多くの野草は守られています。
大変珍しいものとして、シロバナタンポポとカントウタンポポの雑種らしきものを発見しました(写真下)。この公園には、シロバナタンポポもカントウタンポポも多く生育していました。
以下の写真はクリックして拡大して見てください
観察風景
桜草公園:左手前はサクラソウ、黄色い花はノウルシ
ソクズ : スイカズラ科ニワトコ属多年草、別名クサニワトコ。ニワトコに似ているが草本。生薬に。
キンミズヒキ(金水引): バラ科キンミズヒキ属多年草。果実はひっつき虫に。金色のミズヒキといきたいところだが?
センニンソウ(仙人草) : キンポウゲ科センニンソウ属多年草。果実の白い毛を仙人のひげに見立てた。有毒。
トモエソウ(巴草): オトギリソウ科オトギリソウ属多年草。キンシバイやビョウヤナギに似るが草本で、花が巴形。
ノウルシ(野漆): トウダイグサ科トウダイグサ属多年草。傷をつけて出た乳液が漆のようにかぶれるので野漆。絶滅危惧Ⅱ類。トウダイグサに似ている。一面に繁殖していました。
ノカラマツ(野唐松): キンポウゲ科カラマツソウ属。準絶滅危惧種。名の由来は花が唐松の葉の着き方に似ているから。
ヒサノカサ(蛙の傘): キンポウゲ科キンポウゲ属。湿地に生えて、花を蛙の傘に見立てた。絶滅危惧Ⅱ類。
ヒロハハナヤスリ(広葉花鑢): シダ植物。ハナヤスリ科ハナヤスリ属。
花鑢は、胞子葉が棒の鑢に似ているから。
シロバナタンポポとカントウタンポポの交雑種(推定)
新宿御苑の巨樹(巨木) [植物観察]
新宿御苑の巨樹(巨木)
恒例の観察会が新宿御苑で開催されました。今回は、新宿御苑の巨樹(巨木)について投稿させていただきました。ちなみに、地上130㎝の位置での幹周りが300㎝以上の樹木を巨樹(巨木)とされています。新宿御苑には巨樹が約180本あるそうです。これらの中で、目にとまった樹木として、モミジバスズカケノキ、ユリノキ、ヒマラヤスギ、ホオノキがあげられます。また、巨樹には属さないのですがソメイヨシノの大木(老木)を紹介させていただきました(これらの写真は下に:クリックして見て下さい)。
モミジバスズカケノキ(プラタナス):スズカケノキとアメリカスズカケノキの交配種。モミジバスズカケノキが日本に導入された時期は不明ですが、明治20年代に新宿御苑に植えられたのが日本最古と言われています。新宿御苑のプラタナスを母樹として全国に広まったとされています。舎人公園にも生育しています。
ユリノキ(半纏木、蜜源樹):ユリノキは明治9年頃、日本で最初に新宿御苑に植えられ、明治40年、採取された種子から街路樹用の苗木が大量に作られて全国に広まったそうです。舎人公園にも多く生育しています。
ヒマラヤスギ:明治初期に日本に導入され、公園などに栽植され、世界三大造園木(ナンヨウスギ・コウヤマキ・ヒマラヤスギ)の一つとされています。球果は有名なシーダローズコーン。舎人公園にも生育しています。
ホオノキ:強いアレロパシー(他感作用)を示すので、ホオノキの樹冠下では他感物質により生育が抑制され、他の植物が生えにくいようです。葉には芳香、殺菌作用があるのでおにぎりや朴葉寿司などに使用されてきました。材は硬く下駄の歯(朴歯下駄)に利用されました。舎人公園にも多数生育。ユーカリもアレロパシーが知られています。アレロパシーの研究では農業環境技術研究所が有名です。
ソメイヨシノ:新宿御苑には、ソメイヨシノの大木・老木(幹周150~200㎝程度)が恐らく数十本はあると推定されました。ソメイヨシノの寿命は60年説が有名ですが、適切な管理で130年も生き続けている例もあり、60年説が風化しつつあるような気がします。本園のソメイヨシノの歴史は分かりませんが、古いもので100年という報告もあります。舎人公園にも生育しています。
モミジバスズカケノキ:本巨樹は2007年の台風で折れ、現在治療継続中。国内最古の木。
ユリノキ:この樹は樹齢約130年とか、幹周り3.9m、樹高35mの巨樹です。
ヒマラヤスギ:幹周り約4mで100年以上は経過しているのでは?
ホオノキ:巨樹・老木で、治療し復活を期す。
ソメイヨシノ:幹回り3mはありそう。沢山ある老木でも一番大きいのでは。
師走の北の丸公園 [植物観察]
新年あけまして、おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
師走の北の丸公園
12月に恒例の花と緑の講座が、皇居に隣接する国民公園であり、紅葉の名所として知られている北の丸公園で開催されました。田安門をくぐると目の前に大銀杏が目につきました。日比谷公園の首賭け銀杏を思い出しました。目に留まった植物を紹介させていただきました。
この公園には、植物の名前を当てるグリーンアドベンチャーがありました(下の最後の写真をクリックして拡大して見て下さい)。
講座の風景
大銀杏:イチョウは、裸子植物で雌雄異種。花粉は風媒花で、雌花と受粉する。イチョウの場合受粉後、鞭毛を持つ運動能力のある精子が花粉から出て卵子まで泳いでいき受精するので、普通の被子植物の受精形態と異なる。
一面もみじの絨毯(じゅうたん)。
サンシュユ:無数の赤いグミみたいな果実が見事。果実は漢方薬に、また食べられるがあまり美味しくない。
ムクロジ:沢山の果実が。黄色い果皮には多量のサポニンを含み、水を泡立てる働きがあるので、洗濯などに広く利用されてきました。黒い種子は羽子板の羽の黒い玉に利用。
ニシキギ:若枝の表皮を突き破って生成したコルク質の2枚の翼(ヨク)が見事に発達している。
グリーンアドベンチャー(写真をクリックして拡大して見て下さい)。
ハマ茶(浜茶・カワラケツメイ茶) [植物観察]
ハマ茶(浜茶・カワラケツメイ茶)
カワラケツメイ(川原決明)は、花(黄)が普通のマメ科とやや異なり、APG植物分類体系(本ブログで記述:2010/5/11)では日本に自生するマメ科草本の中では、唯一マメ科ジャケツイバラ亜科に分類されている一年草です。川原に生える決明という意味。決明とは夷(エビス)草の漢名。エビスグサに薬効が似ていて、川原に生えるのでカワラケツメイ。舎人公園野草見本園にはエビスグサと共に生育しています。カワラケツメイ茶のことを鳥取県ではハマ茶と呼び、私の故郷(同東伯郡湯梨浜町町はわい長瀬)は砂丘地でもあり、昔から継続して(茶樹のお茶がわりに)飲んでいます。味と色はホウジ茶に似ています。炒り立てのお茶は香ばしい味がします。名前は地方により、ハマ茶、マメ茶、ネム茶、ゴウカン茶、コウボウ茶などと呼ばれ、混合健康茶に利用されています。 漢方では、強壮、利尿、胃腸・腎臓などに薬効があるとされています。外見はクサネム(果実は下向き)に似ていますが、花が黄色、果実がやや上を向く違いがあります。
ハマ茶の作り方 :調整方法は私の実家から伝わっている方法ですが簡単です。 春種まき・・・・・夏頃開花・・・・・秋、扁平な豆果が茶色に熟す・・・・・引き抜いて結束・・・・・通風のよい室内で乾燥・・・・・根と太い茎を切除し、地上部を数センチに切断・・・・・ホーロー鍋で煎ってお茶に使う(密封すれば長期間保存可能)。
カワラケツメイ:開花直前
カワラケツメイ:開花・結実期
カワラケツメイ茶(浜茶)
リギダマツの不思議 [植物観察]
リギダマツの不思議
リギダマツ(リキダマツ) : マツ科マツ属、学名 Pinus rigida Mill. 英名 : Pitch pine.北米大西洋沿岸原産で、 直立した幹は15~25mになります。
葉はテーダマツ、ダイオウショウと同じく3本束生(3針葉)です。球果はとげをもち、翌年の秋に成熟し10~12年もの間、枝上に残るのでやたらと松毬が目立つ変わり者です。
下にリギダマツの幹から葉が叢生している様子を写真でお見せします。複数の固体で同様の現象が見られました。
本リギダマツは、恒例の講座“花と緑をもっと知ろう”が9月8日都立野川公園で開催された観察会での出会いです。
リギダマツの幹から葉が叢生することは、珍しくないようですが、多くの種のマツを見てきましたが、このような現象を見たのは始めてでした。
都立野川公園は、大木が林立していて、散歩に適し、野川沿いの自然観察園では野草の観察に向くようです。ホタルの観察もできます。また、カタクリ(の山)、ハエドクソウ、ウバユリ、ヤマユリ、アキノタムラソウ、キツネノカミソリなども観察できます。
今回は大雨のため、十分な観察は出来ませんでしたが、サービスセンタター前にクスノキの巨木が聳え立っていました。エノキ(大木)の樹姿が左右対称で整っており、自然の大盆栽という感じでした。ヤマボウシの大木の下に果実が落ちていたので賞味させていただきましたが、エノキ・ムクノキの実以上の甘味が感じられました。
リギダマツの幹から葉が叢生している様子
クスノキの巨木:幹周り約4メートル。
因みに全国巨木トップは鹿児島県姶良郡蒲生町八幡神社の
クスノキ(24、22メートル、蒲生の大クス)。
大雨のため、室内の見学が好評でした。
舎人公園に生育している花粉症原因植物 [植物観察]
舎人公園に生育している花粉症原因植物
先日、舎人公園に花粉症の原因になるカモガヤが生育しているかどうか問い合わせがありました。調べてみたら数箇所生育していることが確認されました。現在舎人公園に生えている主な花粉症原因植物として、野草ではカモガヤ(オーチャードグラス)、オオアワガエリ(チモシー)、ブタクサ、ヨモギ、ヒメガマが挙げられます。樹木ではスギ、マツ、クリ、コナラ、ハンノキ、クヌギ、ケヤキ、シラカシがあります。また、オオブタクサ、スズメノテッポウ、ホソムギ、ネズミムギ、カナムグラ、ギシギシ類、タデ類も原因物質として知られており、現在生育しております。その他未確認のものも沢山存在していると推定されます。
花粉学辞典(1995)によると53種が掲載されています。しかし、この中には、ウメ、モモ、ナシ、リンゴ、ミカン、ブドウ、タンポポ、イネ、バラ、キクなど昔から身近な植物も含まれており、私としまして“ええ”という感じがします。
ブタクサ(豚草)和名はhog(豚)+weed(草)からつけられた。北アメリカ原産。キク科ブタクサ属の一年草。明治初期渡来。開花は7~10月。舎人公園には多く見られる。
カモガヤ(鴨茅・オーチャードグラス) : イネ科カモガヤ属の多年草。地中海~西アジア原産 。明治初期アメリカからチモシーと共に牧草として導入された。その後、野生化した。名は小穂の形が鴨の足に似ている。小穂は扁平。開花は7~8月。
オオアワガエリ(大粟返り・チモシー) : イネ科アワガエリ属の多年草。ヨーロッパ原産で日本には、アメリカから輸入された。名は穂が泡のように見えるから?開花は5~8月。
ショクダイオオコンニヤク(燭台大蒟蒻)開花 [植物観察]
別名スマトラオオコンニャク:サトイモ科コンニャク属でインドネシアスマトラ島の絶滅危惧種。
観察・一日目 : 小石川植物園のショクダイオオコンニヤク開花ニュースを聞き、7月21日出かけました。残念ながら、開花前の蕾でしたが迫力がありました。花のように見えるのは、正式には花ではなく花序なのです。花序は花(雄花と雌花)、付属体、仏炎苞(葉の変形で花びら状)から構成されています。名の由来は花序の形が燭台に似ているから。ギネスブックに公認されている世界最大の花は、東南アジアに生育しているブドウ科の植物に寄生するラフレシア(ラフレシア科)だそうで、花は最大で直径90㎝にもなるようです。ショクダイオオコンニヤクは、正式には世界一大きな花ではなく世界一大きな花序ということなのです。今回小石川植物園の開花は、1991年以来19年ぶりだそうです。日本で栽培されているコンニャクの花(花序)を大きくした感じでした。日本のコンニャクの花は4年以上作付けされたものでなければ、花が咲かないとされており、3年芋で収穫してしまうので、産地でもなかなかコンニャクの花を見ることは少ないようでが、開花したもので大きいものは高さが70㎝にもなるようです。3年芋の大きさは直径15~20㎝程度とされています。今回展示されたショクダイオオコンニヤクの芋は直径45㎝位だそうで、花(花序)の高さは156㎝、直径約80cmです。現地では高さ3m以上、直径1.5m以上にもなるとか。
観察・二日後 : テレビや新聞の宣伝に刺激され、二日後の23日に再度ショクダイオオコンニヤクを見に出かけました。花(仏炎苞)は開花とのことでしたが、少ししぼんでいました。写真を見てください。
雑感:23日朝、小石川植物園に到着したら、なんと見物客の行列が約2kmにも及び、35℃の炎天下4時間かけやっと見ることができました。石原裕次郎さんの告別式以上でした。途中から入場制限のため多くの方が植物園に入ることが出来ませんでした。気の毒でした。
観察・一日目:蕾の状態
観察・二日後:開花中、悪臭は感じられず
観察・二日後:開花拡大写真
ショクダイオオコンニヤクの生活史(小石川植物園展示):クリックして拡大して見てください。
国営武蔵丘陵森林公園の野草 [植物観察]
国営武蔵丘陵森林公園の野草
恒例の読売文化センター講座“花と緑をもっと知ろう”が国営武蔵丘陵森林公園で開催されました。丘陵地とあって山野草の宝庫です。イカリソウ、カタクリ、クリンソウ、ザゼンソウ、ハエドクソウ、ヤマユリ、キンラン、クマガイソウ、ヤブレガサ他150種以上が見られます。冊子野草コース山野草ガイドが販売されており、観察に役立ちます。昼食で、ヤマユリ弁当を展望台食堂で食べました。
今回は、チドメグサ類、ヤマユリ、ウバユリ、オオバノトンボソウを紹介させていただきます。
草丈2mにもなるヤマユリの観察風景。クリックするとユリが見えると思います。あいにく雨でした。
チドメグサ(血止草) : 葉を止血に使用した。ヨモギも止血に使用した経験があります。どこでも見られ、庭や植木鉢などに生え湿気を好む。茎が伸び、節から根を出し、増える。葉は直径1㎝程度と他のチドメグサより小さく、円形で掌状に浅く裂ける。
ノチドメ(野血止) : 湿気のある田の畦、野原を好む。葉は直径2~3㎝の腎円形で5深裂する。
オオチドメ(大血止) : 別名ヤマチドメ。山野に普通に生える。葉は直径1.5~3㎝の腎円形で切れ込みは浅い。花柄の長さが長く、葉の上に突き出すが、ノチドメは花柄の長さが短く葉の下に留まる。
タテバチドメグサ(ウチワゼニグサ) : 帰化植物。葉は直径1~5㎝で円形。湿地や水中に生える。熱帯魚の水草として栽培されている。舎人公園でも見られる。葉は浅い鋸歯があり、切れ込みは無い。写真は舎人公園で撮影。
以上のチドメグサ類はいずれもセリ科チドメグサ属の多年草です。このブログですでにご紹介しましたが、新しいAPG分類体系ではセリ科ではなくウコギ科になります。
ウバユリ : ユリ科とはいえウバユリ属で、葉の葉脈は網状脈で、花の形もユリ属のヤマユリなどと異なります。開花ころ、葉が枯れて葉(歯)無し姥(うば)に例えてウバユリ。縄文時代にこの根が食べられていたそうです。残念ながら開花前でした。
オオバノトンボソウ(大葉の蜻蛉草) : ラン科の多年草で、山林内に生えトンボソウより葉が大きい。花をトンボに見立てた。
ヤマユリ(山百合) : 代表的なユリで、漏斗状の花を横向きに咲かせ、大きな白の花被片は反返り、黄色い筋が入り、赤い斑点を有する。基部に乳頭状の突起がある。花粉は紅色。香りが良く球根は食用に。林内のヤマユリはほとんど横たわっており、開花直前でした。写真は梅林に生えていたものでなんと直立し、草丈は2メートルほどありました。
舎人公園野草見本園に巨大なアーティチョークが開花 [植物観察]
舎人公園野草見本園に巨大なアーティチョークが開花
昨年6月22日、本ブログで紹介させていただきましたが、一年経過し、株も三倍に増え、一段と豪華に生長してくれたので再度ご案内させていただきました。
アーティチョーク(朝鮮薊・チョウセンアザミ)そのものは、それほど珍しいものではないのですが、大きさが自慢の種?なのです。小石川植物園や幾つかの公園でもみられますが、ここまで大きく育っている姿は見ておりません。まさに日本一?かも。一番大きい株の草丈は1.65m、草幅は1.8m、茎の直径は5㎝ほどありました。来園者の皆さんは、大きさと花の美しさに驚いていらしゃいます。アーティチョークは食べたことがあるが、生育姿を見るのは初めとおしゃる方もおられました。これから3~4週間程度花は見られると思います。
巨大なアーティチョーク:開花、写真をクリックして下さい。
花の拡大写真:直径約20㎝、写真をクリックして下さい。
つくば植物園の絶滅危惧野草 [植物観察]
つくば植物園の絶滅危惧野草
恒例の読売・日本テレビ文化センターの講座“花とみどりをもっと知ろう”がつくば植物園で開催されました。ここで管理されている絶滅危惧関連野草の数種を写真で紹介させていただきました。
参考資料 : わが国維管束植物の絶滅危惧種などの数
わが国の維管束植物レッドデーター数(絶滅のおそれのある野生生物に関するデーター数)は以下のように1835種にのぼります(維管束植物レッドデーター、平成12年7月、生物多様性情報システム、環境省より)。
保全状態評価
絶滅(EX、我が国ではすでに絶滅したと考えられる種):20
野生絶滅(EW、飼育・栽培下でのみ存続している種): 5
絶滅危惧(Threatened):絶滅の恐れのある状態で、絶滅危惧ⅠA類、絶滅危惧ⅠB類、絶滅危惧Ⅱ類から構成されています。
絶滅危惧ⅠA類(CR、ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種): 564
絶滅危惧ⅠB類 (EN、IA類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種): 480
絶滅危惧Ⅱ類(VU、絶滅の危険が増大している種): 621
準絶滅危惧(NT、現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては絶滅危惧に移行する可能性のある種): 145
省略記号の英語の意味
Extinct(EX、絶滅)、 Extinct in the Wild(EW、野生絶滅)、 Critically Endangered(CR、絶滅寸前、絶滅危惧ⅠA類)、 Endangered(EN、絶滅危機、絶滅危惧ⅠB類) 、 Vulnerable(VU、危急、絶滅危惧Ⅱ類)、 Near Threatened(N T、準絶滅危惧)、 Data Deficient(DD、 情報不足) 。
比較的身近な野草では、ムニンノボタン(ⅠA類)、タチスミレ(ⅠB類)、アサマフウロ(ⅠB類)、ムラサキ(ⅠB類)、アツモリソウ(Ⅱ類)、オキナグサ(Ⅱ類)、フクジュソウ(Ⅱ類)、タコノアシ(Ⅱ類)、オニバス(Ⅱ類)、サクラソウ(Ⅱ類)、カイジンドウ(Ⅱ類)、イヌノフグリ(Ⅱ類)、エビネ(Ⅱ類)、サギソウ(準絶滅危惧)、フジバカマ(準絶滅危惧)、シラン(準絶滅危惧)、ヒメサユリ(準絶滅危惧)があります。2007年8月の見直しで、サクラソウとタコノアシは準絶滅危惧に、フクジュソウはランク外に格付けされました。
舎人公園のボランティア花壇の片隅に、野草見本園を開園致しております。ありふれたもの、昔懐かしいもの、珍しいものなど100種以上に名札を付けて来園者の方々に親しんでいただいております。足立区の野草(冊子)も発行されています。
つくば植物園で観察された絶滅危惧種などの幾つかを下に写真で紹介させていただきます。
ヒメサユリ(オトメユリ):準危惧種、日本特産のユリ
開花直前。ユリ科の多年草。
アサマフウロ:ⅠB類、花は8~9月で濃紅紫色。浅間
山麓で多く見られる。フウロソウ科の多年草。
タチスミレ:ⅠB類、現在利根川流域で見られる。
スミレ科の多年草。
カイジンドウ:Ⅱ類、落葉樹林に生える多年草で花は
5~6月。甲斐の国に咲くリンドウの転訛。シソ科。
ムラサキ:ⅠB類、根(紫根)は生薬、染料に(紫色)。
ムラサキ科の多年草。
オキナグサ(翁草):Ⅱ類、羽毛状の痩果の集まりを
老人の白髪に例えた。花は4~5月、キンポウゲ科の
多年草。