3月11日の福島原発事故により、水田土壌も汚染されました。セシウムで汚染された水田土壌の除染などに参考となるように、水田に存在する(作土:表層から約15㎝深)放射性セシウム(134+137Cs)の経年的な減少割合を試算しました。試算の条件として、1)134Csと137Csが等量放出された、2)放射性セシウムの年間溶脱量と水稲による持ち出し量は合計しても1%程度で、134Csの年間の物理的減衰に比べ無視できるレベルにある、3)137Csの作土中滞留半減時間は全国15都道府県平均で約16年である(核爆発実験由来137Csから算定、下記文献)とした。
その結果を下図に示しました。
これらの結果は、水田に蓄積した放射性セシウムの除染が行われなかった場合に適用されます。
今回の福島原発事故に適用される放射性セシウム(134+137Cs)の水田土壌からの減少(図:赤線)は対数目盛りでも曲線になり、最初は半減期の短い134Csの減衰の影響を強く受けた減少をします。その後は半減期の長い137Csの減少形態に従い直線的に減少していきます。134+137Csが水田作土から半分(0.5)に減少するのは約5年と試算されました。1年では0.8、2年0.7、3年0.62、4年0.56と算出されました。137Cs単独の減少 (図:緑線)は、5年で0.8、16年では半分になります(核爆発実験由来)。134Cs単独では(図:黒線)、上述のとおり水田からの放射性セシウムの溶脱や水稲による持ち出しが少ないため、134Csの物理的半減期とほぼ同じ約2年で半減します。
これらの結果は、平均的な値で、土壌、栽培条件などにより2倍あるいは半分程度の変動はあると考えられます。
参考文献
1)日本の水田における作土中の137Csの滞留半減時間、RADIOISOTOPES、48、635-644(1999)
2)わが国の米、小麦および土壌による90Srと137Cs濃度の長期モニタリングと変動解析、農業環境技術研究所報告24、1-24(2006)
(津村昭人原図)
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