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新しい植物分類 : APG分類体系とは [植物観察]

新しい植物分類 APG分類体系とは

 最近、植物の分類体系に新しい手法が導入され話題になっています。植物観察を行っている者にとって、今まで使っていた科名が無くなる、変更されるなどにより混乱が生じる可能性があります。今回はその概要を紹介させていただきます

 1990年以降、被子植物の分類体系に、DNA解析(葉緑体DNA解析)による系統学手法が導入されました。この手法の進展により欧米では植物図鑑などに新しい体系に変わってきています。わが国でも、将来この手法が植物分類学の主流になると考えられています(APG植物分類体系:APG法)。この新しい分類を実行する植物学者の団体名がAngiosperm Pfylogeny GroupAPG:被子植物系統発生グループ)です。

 従来の分類法は、リンネの自然の体系(18世紀)から、生物を科、属といった分類体系が生まれました。これにダーウイン(19世紀)の進化論が取り入れられ、花や葉を基にした類縁関係を基にしたマクロ形態的な分類体系が定着し、現在の教科書や図鑑でこの分類方法が採用されてきています。この方法は、単純な構造を持つ花から複雑な構造の花が進化したとして、植物を系統的に分類したもので、誰でも直感的に分かり易い方法なのです。 ところが、APG植物分類体系はDNA情報を基にした植物の新しい分類法です。この方法では、外見によらないで、遺伝子情報(DNA情報)の差から類縁関係をつかもうとするものです。学術的には優れた手法ですが、植物を観察する植物愛好家にとっては、混乱をきたし、定着するまで戸惑いがあるのではないでしょうか。すでに、一部の図鑑ではAPGを採用しているものもあるようですが、将来多くの図鑑や教科書が新しい方法に書き換えになることでしょう。

身近な例では、アジサイ(ユキノシタ科)はアジサイ科に、オオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科)はオオバコ科に、ムラサキシキブ(クマツズラ科)はシソ科に変わります。アオキ、スズランも変わります。一方、スギの仲間(スギ科)はヒノキ科に、シロザやアカザの仲間(アカザ科)はヒユ科に、カエデの仲間(カエデ科)はムクロジ科に、トチノキの仲間(トチノキ科)もムクロジ科にかわります。

APG法導入により科が変わる種の例

アオキ(ミズキ科)はアオキ科またはガリア科に、アジサイ(ユキノシタ科)はアジサイ科に、オオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科)はオオバコ科に、スズラン(ユリ科)はキジカクシ科またはナギイカダ科に、ムラサキシキブ(クマツヅラ科) は シソ科にそれぞれ変更されます。

APG法導入により科名が無くなり他の科に編入される例

スギ科はヒノキ科に、カエデ科・トチノキ科はムクロジ科に、アカザ科は ヒユ科に、ヒシ科・ザクロ科はミソハギ科に、イイギリ科はヤナギ科に、ガガイモ科はキョウチクトウ科に、アオギリ科・シナノキ科・などはアオイ科にそれぞれ変更されます。

馴染みの深いスギ科、カエデ科、トチノキ科、アカザ科などが無くなるのはしばらく混乱しそうです。ちなみに、スギはヒノキ科スギ属に分類されます。 

下の図は従来の分類法と新しいAPG分類法を模式化したものです。

DSC_0041r.jpg 


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