新しい植物分類 : APG分類体系とは [植物観察]
新しい植物分類 : APG分類体系とは
最近、植物の分類体系に新しい手法が導入され話題になっています。植物観察を行っている者にとって、今まで使っていた科名が無くなる、変更されるなどにより混乱が生じる可能性があります。今回はその概要を紹介させていただきます。
1990年以降、被子植物の分類体系に、DNA解析(葉緑体DNA解析)による系統学手法が導入されました。この手法の進展により欧米では植物図鑑などに新しい体系に変わってきています。わが国でも、将来この手法が植物分類学の主流になると考えられています(APG植物分類体系:APG法)。この新しい分類を実行する植物学者の団体名がAngiosperm Pfylogeny Group(APG:被子植物系統発生グループ)です。
従来の分類法は、リンネの自然の体系(18世紀)から、生物を科、属といった分類体系が生まれました。これにダーウイン(19世紀)の進化論が取り入れられ、花や葉を基にした類縁関係を基にしたマクロ形態的な分類体系が定着し、現在の教科書や図鑑でこの分類方法が採用されてきています。この方法は、単純な構造を持つ花から複雑な構造の花が進化したとして、植物を系統的に分類したもので、誰でも直感的に分かり易い方法なのです。 ところが、APG植物分類体系はDNA情報を基にした植物の新しい分類法です。この方法では、外見によらないで、遺伝子情報(DNA情報)の差から類縁関係をつかもうとするものです。学術的には優れた手法ですが、植物を観察する植物愛好家にとっては、混乱をきたし、定着するまで戸惑いがあるのではないでしょうか。すでに、一部の図鑑ではAPG法を採用しているものもあるようですが、将来多くの図鑑や教科書が新しい方法に書き換えになることでしょう。身近な例では、アジサイ(ユキノシタ科)はアジサイ科に、オオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科)はオオバコ科に、ムラサキシキブ(クマツズラ科)はシソ科に変わります。アオキ、スズランも変わります。一方、スギの仲間(スギ科)はヒノキ科に、シロザやアカザの仲間(アカザ科)はヒユ科に、カエデの仲間(カエデ科)はムクロジ科に、トチノキの仲間(トチノキ科)もムクロジ科にかわります。
APG法導入により科が変わる種の例
アオキ(ミズキ科)はアオキ科またはガリア科に、アジサイ(ユキノシタ科)はアジサイ科に、オオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科)はオオバコ科に、スズラン(ユリ科)はキジカクシ科またはナギイカダ科に、ムラサキシキブ(クマツヅラ科) は シソ科にそれぞれ変更されます。
APG法導入により科名が無くなり他の科に編入される例
スギ科はヒノキ科に、カエデ科・トチノキ科はムクロジ科に、アカザ科は ヒユ科に、ヒシ科・ザクロ科はミソハギ科に、イイギリ科はヤナギ科に、ガガイモ科はキョウチクトウ科に、アオギリ科・シナノキ科・などはアオイ科にそれぞれ変更されます。
馴染みの深いスギ科、カエデ科、トチノキ科、アカザ科などが無くなるのはしばらく混乱しそうです。ちなみに、スギはヒノキ科スギ属に分類されます。
下の図は従来の分類法と新しいAPG法分類法を模式化したものです。
川口グリンセンターの春の珍しい花とアミガサタケ [植物観察]
冊子“足立区の野草”(A4版30頁、野草302種解説付き写真紹介)が好評です。御入用希望の方は御一報下さい。実費で御送付させていただきます。
月一回の読売文化センターの講座が川口グリンセンターで開催されました。ここで、目に止まった幾つかを紹介させていただきました。
アミガサタケ(網笠茸、写真1):春先に生える。フランスでは高級食用キノコとか。生食すると中毒。
オウゴンガシワ(黄金柏、写真2):ブナ科、ナラガシワの園芸種。春の新葉が黄金色で美しい。市販されているので庭に一本いかがですか。
ハラン(葉欄、写真3):ユリ科多年性。花が珍しかったので取り上げました。APG植物分類体系(新しいAPG植物分類体系については後ほどこのブログでとりあげます)ではスズラン科。婆蘭、馬蘭の転。葉は生花や料理に、果実は薬用に。嫌われ者のダンゴムシが花粉の媒介をするからおもしろい。
シダレアカマツ(枝垂れ赤松、写真4):枝が枝垂れる珍しい赤松。
ヨレスギ(縒れ杉、写真5):葉が捩れて枝の周りに螺旋状に巻きつく。杉の変種。
エンコウスギ(猿猴杉、写真5):杉の園芸種、枝が甚だ長く伸びて、猿が手を伸ばしたように見える。
ジロボウエンゴサク(次郎坊延胡索、写真6):伊勢地方でこれを次郎坊と呼ぶ(スミレを太郎坊)、延胡索は漢方の名。ケシ科の多年草。
ムラサキケマン(紫華鬘、写真6):ケシ科越年草、葉はニンジンの葉に似る。華鬘は仏殿を飾る仏具。花は綺麗。
ミズバショウ(水芭蕉)とフクジュソウ(福寿草)・写真7):お馴染みの野草ですが、川口でミズバショウの花が見られました。
そのほか、シロバナマンサク、カミヤツデ、シジミバナなどが目に付きました。
観察会風景
写真1 珍しいキノコ:アミガサタケ
写真2 オウゴンガシワ
写真3 普段見失っているハランの花
写真4 珍しいシダレアカマツ
写真5 エンコウスギとヨレスギ
写真6 ケシ科のジロボウエンゴサクとムラサキケマン
写真7 ミズバショウが咲いていました
シロバナヒメオドリコソウが舎人公園に局所群生 [植物観察]
シロバナヒメオドリコソウ(白花姫踊り子草):シソ科オドリコソウ属の越年草、Lamium purpureum f.albiflorum。
ヒメオドリコソウといえば、どこにでも見られるありふれた野草ですが、これの白花であるシロバナヒメオドリコソウが(下の写真)舎人公園で局地的に群生し、現在開花しています。今月いっぱいは開花が見られるでしょう。
シロバナヒメオドリコソウは比較的珍しく、ヒメオドリコソウの突然変異とも考えられていますが?外見は、花の色が白、先端付近の葉色は緑です。これに対してヒメオドリコソウは、花の色は淡紅色、先端付近の葉は赤紫色を呈します。
同様に、頻度は少ないのですが、シロバナアカツメクサ(アカツメクサの白花)、シロバナツユクサ(ツユクサ白花)、シロバナユウゲショウ(ユウゲショウの白花)が舎人公園で観察されます。
ヒメオドリコソウとシロバナヒメオドリコソウ
ヒメオドリコソウとシロバナヒメオドリコソウの混生
舎人公園C地区(撮影2010年4月8日)
ヒメハンゲが舎人公園で開花 [植物観察]
ヒメハンゲが舎人公園で開花
ヒメハンゲ(流通名):サトイモ科多年草。ウラシマソウ、マムシグサやカラスビシャク(ハンゲ)、オオハンゲの仲間。ハンゲ(半夏):カラスビャクシンの漢名で、球根を漢方薬に利用。
ヒメハンゲを図鑑でしらべても記述がなく、ウェブの検索で数件ヒットしますが、説明はほとんどありません。北足立市場から入手したもので、珍しいものではないと思われますが情報がほとんど無いのが現状です。ハンゲ属(Pinellia)の園芸種と推定されますが、ヒメとつくだけあって、球根は小さく、植物全体が小振りです。
入手した時には、地上部は枯死しており、小さい白っぽい球根(球茎)がたくさん着いていました。この3月、サトイモに似た葉と、紫色の仏炎苞(花茎は白色)が舎人公園野草見本園に生えてきました。仏炎苞に包まれた花軸に肉穂花序がつくられています。
栽培法は簡単な方で、植えっぱなしでもどんどん増えていきます。
ヒメハンゲの生育状況:白い花茎は短く仏炎苞の下半分は白色。
指の大きさから、仏炎苞や葉の大きさがわかる。肉穂花序が苞に包まれている。
早春の花(続):小石川植物園 [植物観察]
早春の花(続):小石川植物園
冊子“足立区の野草”(A4版30頁、野草302種解説付き写
真紹介)が好評です。御入用希望の方は御一報下さい。実費
で御送付させていただきます。
前回は日比谷公園の春一番の花を、今回は小石川植物園の珍し
い早春の花を紹介させていただきました。開花していた珍しい
野草は、コゴメイヌノフグリ、ヒメウズ、ヤマアイ、ユキワリイチゲ、
セントウソウ(前回紹介)でした。
写真で確かめて下さい。
読売文化センター講座:植物観察会・小石川植物園にて
コゴメイヌノフグリ(ゴマノハグサ科一年草):小米犬の陰嚢。小石川植物園
特有種。当公園に群落。最近当公園以外でも観察されるとか。右写真のオオ
イヌノフグリはお馴染みの野草です。タチツボスミレ(スミレ科多年草):ごく
普通のスミレ。花ののち茎が伸びる(立つ)。
クサイチゴ(バラ科多年草):どくでも見られる木苺。背丈が低く草の名が着く
が木本。食べられる。
チャボタイゲキ(トウダイグサ科一年草):矮鶏大戟。小石川植物園に群落。
帰化植物。なんとなくトウダイグサに似ている。
ヒメウズ(キンポウゲ科多年草):姫烏頭。一属(ヒメウズ属)一種と珍しい。
周囲に写っているのはオオアマナ(ユリ科)。
ヤマアイ(トウダイグサ科多年草):山藍。昔は染料として使われたようですが、
タデ科のアイのような色素を含まないため、葉緑素の緑色に染まる。
ユキワリイチゲ(キンポウゲ科多年草):雪割一花.。イチリンソウの仲間。雨で
開花していないが、開花すると花弁が多く綺麗。
早春の花:日比谷公園 [植物観察]
2月下旬~3月上旬に花の観察を日比谷公園で行いました。ハルジオン、キュウリグサ、ノゲシ、コハコベ、オニタビラコは温暖化の影響か、日比谷公園が暖かいのか開花時期が図鑑に記載されている時期より早いようです。このほかナズナ、ウメ類、サクラ類、ツバキ、サザンカなども咲いていました。
2月下旬に咲いた野草の花:どの野草も舎人公園より早い開花でした。
ドングリは自然状態では、種子が乾燥してしまうので、なかなか発芽しない
のですが、ここのアベマキのドングリは幾つか発芽していました。
身近な日陰植物、半日陰植物 [植物観察]
日陰植物、半日陰植物という表現(熟語)はないようですが、ここでは、
表現を簡素化するため、以下のように現在使用されている色々な表現
を一括して日陰・半日陰植物として扱わせていただきました。現在本などで使用されている主な表現:日陰・半日陰向きの植物、
日陰・半日陰でも育つ植物、日陰・半日陰に強い植物、日陰・半日陰
を好む植物、日陰・半日陰に良い植物、日陰・半日陰に植える植物、
日陰・半日陰に耐えられる植物。身近な日陰植物と半日陰植物54種を我が家(標準体文字)と舎人公園
(斜体文字)で生育している種を選んでみました。これらの植物を地植え
にすれば、真夏に直射日光を長く浴びて好ましくないものがあります。下
の☀を付した植物は、むしろ陽ざしを好むが、半日陰でも育つのは、狭い路地
裏でも真夏には太陽が真上にくるので結構エネルギーを蓄える(光合成によ
る澱粉などの生合成)からであると推定されます。
日陰、半日陰植物一覧
☀:半日陰でも育つがむしろ、日なたを好む植物。斜体文字は舎人公園に生育。標準文字は
我が家で生育している。アオキ | トクサ☀ |
アカンサス☀ | ナルコユリ |
アジサイ類 | ニオイヒバ☀ |
アジュガ☀ | ニシキギ☀ |
アセビ☀ | ノコンギク☀ |
アベリア☀ | ハクチョウゲ |
アマドコロ☀ | ハツユキカズラ |
イチリンソウ類 | ハナニラ☀ |
ウツギ類☀ | ヒイラギ☀ |
エビネ類 | ヒトリシズカ |
カルミア☀ | ヒマラヤユキノシタ☀ |
ギボウシ | ヒュウガミズキ☀ |
クチナシ☀ | ピラカンサ☀ |
ケマンソウ(タイツリソウ) | フッキソウ |
コノテガシワ☀ | ヘデラ(アイビー)☀ |
シュンラン | ヘメロカリス☀ |
シラン | ホトトギス類 |
ジンチョウゲ☀ | ミズヒキ |
ゼラニウム☀ | ミヤコワスレ☀ |
センリョウ | ヤエドクダミ |
タマシダ | ヤツデ☀ |
タマツゲ☀ | ヤブコウジ |
チゴユリ | ヤブラン |
ツツジ☀ | ヤマブキ☀ |
ツバキ☀ | ヤマボウシ☀ |
ツルニチニチソウ☀ | ユキノシタ |
ドイツスズラン | ローズマリー☀ |
我が家の日陰・半日陰植物(毎年咲き、株が増えてきました)
冬の珍しい植物(新宿御苑) [植物観察]
本ブログも2007年9月から2年4カ月経過しますが、お陰様で総
閲覧数の累計は52000に達しました。今後ともよろしくお願いい
たします。
冬の珍しい植物(新宿御苑)
月一回恒例の植物観察会(読売・日本テレビ文化センター講座)が、新宿御
苑で開催されました。普段見慣れない植物数種を紹介させていただきまし
た。
観察会の風景
ナンバンギセル(南蛮煙管):ハマウツボ科ナンバンギセル属一年草の寄
生植物で、西洋(南蛮)の煙管に似ている。別名オモイグサ(思草)は万葉集
で詠まれた思い草に因む。ススキに寄生することが多いが、チガヤ、サトウキビ、ミョウガなどの根に
も寄生します。茎は極短く地下にあり、葉は鱗片状で小さい。茎のように見
える15~25㎝の花柄の先に淡紅紫色の筒形の花を開く(写真)。果実の飛散
しやすい多数の超微細な種子は、寄主の根に付着して発芽する点では、以前
このブログで取り上げたヤセウツボ(2008-05-11)と似ています。
写真左は冬のナンバンギセル。右は夏のナンバンギセル(開花)。
イノコズチ(猪子槌)の虫こぶ。
イノコズチ(日陰)、ヒナタイノコズチ:ヒユ科イノコズチ属多年草。猪子槌のいわれは、四角い茎の膨れた節をイノシシの子の膝頭(槌)に見立
てた。が、普通の節はそれ程大きくはない。たまにひと際大きい節を見かけ
ます。これガ、虫こぶです。イノコズチクキマルズイフシといわれ、イノコズ
チウロコタマバエの仕業です。写真はヒナタイノコズチですが、節には穴が
あいており、既に成虫となって飛び去ったことでしょう。節の中にはハエの
幼虫が住んでいるのです。虫こぶの詳しい説明はこのブログ(2009-05-02)
をご参照下さい。
写真左上:イノコズチの虫こぶ。大きい写真はヒナタイノコズチ。果実はひっつき虫。
セントウソウ(仙洞草):セリ科の多年草で、一属(セントウソウ属)一種の在
来種。日本各地の林地などの木陰にはえる。別名オウレンダマシ(葉がオウ
レンの葉に似ている)。白い花は春。
半日陰に生えるセントウソウ。
オオハナワラビ:シダ植物。ハナワラビ科オオハナワラビ属の多年草。夏
地上部は枯れ、9月頃直立の茎が伸び、地表で二分し、栄養葉と胞子葉に
別れて生育します。胞子葉は10~11月頃成熟した胞子を飛ばします。類似
のフユノハナワラビは個体数が少なく、やや日向を好むようです。
半日陰に生えるオオハナワラビ。
サイカチ:マメ科サイカチ属の樹木。舎人公園にもあるハリエンジュ(ニセ
アカシア)やエンジュに似ているが、幹や枝に分岐した鋭い大きな棘が多
い。豆果は長さ30㎝にもなり捩れる。豆果は薬用になり、昔は石鹸の役目
を果たした(サポニンを含む)。
サイカチの大木。写真が逆光ですみません。水元公園にも大木があります。
舎人公園のシモバシラの霜柱 [植物観察]
冊子“足立区の野草”(A4版30頁、野草302種解説付き写真紹介)が好評
です。御入用希望の方は御一報下さい。実費で御送付させていただきます。
舎人公園のシモバシラの霜柱
今年も、野草シモバシラ(枯死)に美しい霜柱ができました。昨日からの冷
え込みがきつく、そのせいか例年より大きな氷の芸術品が生成しました。
近くの方は是非見に来て下さい。午前11時頃まで見られます。先日まで咲
いていた皇帝ダリアは、寒さのためダメージを受けたので、茎を節毎に切
断し、来年の挿し木用に備えました。
舎人公園のシモバシラの霜柱については、本ブログですでに詳しく紹介
させていただいております。ご参照下さい(2007年12月27日、2009年
1月12日投稿)。
12月19日のシモバシラの霜柱:今年最初のせいか小さい。
12月20日の芸術品:過去最大の出来映えです。
舎人公園の皇帝ダリア [植物観察]
舎人公園の皇帝ダリア
舎人公園のボランティア花壇にひと際目立つ皇帝ダリアが開花
しました。この春苗を植えたものです。台風の被害を受けましたが
何とか立派な花を咲かせてくれました。皇帝ダリア:メキシコ原産。ダリアの王様と言われ,草丈は3m以上になります。
花色は赤,白,ピンクなど数種あり、八重咲きもあります。半耐寒性の多年草です。
ご参考までに、苗の増やし方を紹介させていただきます。
12月開花が終わったころ(霜が降りる前)、竹のような太い節を沢山
着けている茎を、根元から3節残してノコギリで切り取ります。切り取
った茎を節ごとにノコギリで切ります。切り方のポイントは、下の写真のように節の上部を短く、下部を長く切
るようにします。一つの茎から10~20の挿し木用の茎(挿し穂)が得ら
れます。芽は節から出ます。挿し穂は、防寒用シートなどを周囲に張った
ポリバケツなどに、湿り気のある小粒の赤玉土を底に数㎝敷き、その上
に挿し穂を並べ、その上に赤玉土を敷きます。何段でも可能です。これら
の操作が終わったら蓋をして来春まで軒下などで保存します。保存中に
芽や根が出ることがあります。翌3月保存していた挿し穂を小粒赤玉土
とパーライトあるいはバーミキュライトの混合土に植え付けます。挿し木
してから1~2月すれば発芽、発根します。これで沢山の苗が出来上がり
です。
舎人公園ボランティア花壇の皇帝ダリア(12月4日初開花)
挿し木用挿し穂の切断位置。赤印をノコギリで切断。赤印の無いところも
同様に先端近くまで切断できます。
足立区のジュウガツザクラ(10月桜) [植物観察]
我が家の直ぐ近くの江北緑道公園(高架線下、足立区皿沼、谷在家周辺)
にジュウガツザクラが今満開です。この桜は10月~1月と春3~4月の二回
開花するのです。ソメイヨシノに比べると、花が地味な感じがしますが、雪
が舞う真冬に見る桜は、また、風情のあるものです。春の花びらの方が大
きいです。一つの枝に白とピンクの花が同時に咲いているのも面白いです。
類似のフユザクラ(冬桜)も同様に二回開花するのですが、ジュウガツザク
ラが八重に対してこの種は一重咲きです。
写真3枚載せました。
ジュウガツザクラ:白とピンクの花びらが一枝に着生している。
ジュウガツザクラ:開花の様子
川口グリーンセンターの珍しい植物 [植物観察]
10月に恒例の講座“花と緑をもっと知ろう”が市立川口グリーンセンターで
開催されました。ここで、目についた植物の数種について紹介させていただ
きました。
サネカズラ(実葛):別名ビナンカズラ(美男葛)。あまり耳慣れない
マツブサ科(以前はモクセイ科)の常緑つる植物で、仲間にシキミが
あります。学名のKadsura japonicaは、葛からとっています。樹皮に水
を加えつぶすと粘液になり、これを髪の整髪に使ったので美男葛
(写真2)。
サビンマツ:Pinus sabiniana、マツ科マツ属の常緑高木で、北アメリカ
原産。葉はダイオウショウのように3本で長く垂れ下がります。日本には、
川口グリーンセンターと京都大学の二箇所に存在する貴重な植物に出
会いました。葉が銀白色なので、遠くから目立ちます(写真3)。
ブッシュカン(仏手柑):ミカン科のシトロン(レモンの仲間)の変種。インド
原産で主に観賞用ですが、漢方、食用にも利用されています。写真では、
果実が手の指らしくありませんが、ものによっては、指形に何本も分岐し
ています。まるで、仏さんの手?です(写真4)。
奇想天外:別名砂漠オモト。ウェルウイッチア科ウェルウイッチア属に属する
一科一属一種の珍しい裸子植物で雌雄異株。世界で最も醜い植物の上位
に挙げられるそうです。アフリカ赤道直下の砂漠に生える生涯二枚の葉を
極めてゆっくり伸ばし続け、寿命は1000年を超えるとか。まさに奇想
天外(写真5)。
ドラゴンフルーツ:サボテン科。属は異なりますが月下美人に似た花を着け、
開花時期はともに夜8時から10時頃です。沖縄産のドラゴンフルーツがスー
パーで販売されています。大きいものは大人の拳大で400円程度と高価
です。ヘルシーな果実で美容フルーツとして人気があるそうです。日本の
月下美人は皆同一クローンでかつ自家不和合性のため、人工授粉をしても
結実しません。
最近、異なるクローンの月下美人が導入され、人工授粉で結実するようにな
り、食用月下美人として販売されています。お宅の月下美人に食用月下美人
で人工交配すれば、果実が生ると思います。因みに、原産地では受粉媒介は
コウモリだそうです(写真6)。
キバナモクレン(黄花木蓮):モクレン科、ハクモクレンとマグノリア・アクミ
ナータ(黄花)交配種で、普段見かけることのできない珍しいモクレンです
(写真省略)。
コーヒーの木:アカネ科コーヒーの木属。温室のコーヒーの木に赤い実が
沢山着いていました。我が家で3年前、コーヒーを購入した時に小さな苗
をいただき、3年間育てた今年初めて白い花が咲き、5つほど実が生りま
した(現在まだ緑色)。冬は温室がないので、陽当りの良い屋内に取り込
みます(写真省略)。
その他、生きた化石メタセコイアです。化石が発見され、絶滅されたと
されていたが、1945年中国で生木が発見されました。その後挿し木と
種子で育て各地に植えられました。ここのメタセコイアは巨木で、幹回
り4.5mほどあります。いくら成長が早いといえ、50~60年でここまで大
きくなったは驚きでした(写真省略)。
写真1、温室での観察会風景
写真2、サネカズラ(美男葛):実が美しい,汁を塗って美男にあやかりたいです。
写真3、サビンマツ:葉が白っぽく目立ちます。日本に2箇所しかない貴重樹。
写真4、ブッシュカン(仏手柑):果実を仏の手に見立てた.食材や漢方にも利用。
写真5、奇想天外:南西アフリカ原産。一生二枚の葉で成長。これはまだ
若い奇想天外と思われます。
写真6、ドラゴンフルーツ:手前の緑色の果実が熟すと赤くなる。いつか
我が家の月下美人に果実をつけて食べようと思っています。
ママコノシリヌグイと食用ホオズキ [植物観察]
川崎市麻生区の栗林の残る栗木地方で学園祭があり、植物観察をする機会に恵
まれました。ここで目についた数種の植物を紹介させていただきました。また、
カラスウリ、アキノノゲシなども生育していました。ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)。別名トゲソバ(棘蕎麦):タデ科一年草
この名の由来は、触っても痛い棘だらけの茎や葉で、継母が“憎い継子の尻を
拭いたらさぞ痛いだろう”から来ているようですが、本当に拭かれたら大変です。
嫁の尻拭き草(韓国では)と呼ばれ、それほど棘が多い野草です。ミゾソバやイシ
ミカワと同じ仲間で、草姿はソバ(蕎麦)そっくりです。
ママコノシリヌグイ:姿はソバそっくり。ピントが甘い。
ショクヨウホオズキ(食用ホオズキ):ナス科一年草。
ホオズキは観賞用として知られていますが、本種は外来種の食用のホオズキ
です。学園キャンパスに生育していました。熟すと袋の中に黄色の果実(普通の
ホオズキ状)は糖度が15度くらいあり意外と甘酸っぱく、食用として、また、健康
食品として注目されています。地域によっては町おこしに利用されているくらい
です。
食用ほおずき:間もなく袋の中の果実が黄熟するでしょう。
オニドコロ(鬼野老):ヤマノイモ科のつる性多年草、雌雄異株。
ナガイモ、ヤマノイモと同じ仲間だが、“むかご”は着かないのみならず根は太ら
ず苦くて食べられません。大きな葉?を持つので鬼がついたという説があります
が、葉は大きくなく鬼を連想できません。トコロ(野老)はひげ根の多い根茎を老人
に例え、長寿を祈る正月飾りに使われたそうです。えび(海老)に対する名前とされ
ています。子供の頃、ガガイモやヤマノイモの3枚の翼を持った果実で鼻の頭にくっ
付けて遊んだ経験のある方がおられると思います。ただし、ナガイモでは出来ません。
舎人公園には雄株のみ存在します。
オニドコロ:右上の翼果を鼻の頭にくっつけて遊ぶ。
植物観察会(小石川植物園) [植物観察]
読売・日本テレビ文化センター講座“花とみどりをもっと知ろう”(6年継続中)
の観察会が小石川植物園で開催されました。そこで観察した植物の幾つか
を紹介させていただきました。
センニンソウ(仙人草):キンポウゲ科。白い密集した花を仙人のひげに例えた。
葉や茎に有毒成分を含み、かぶれることも。舎人公園にもあります。つる性の半低木。オオハンゴンソウ(大反魂草):キク科の多年草で、キクイモに似た野草です。北米原
産で、7~9月に咲きます。種子と地下茎で旺盛に繁殖し、在来植物の生態系に影響を
及ぼす恐れがあるため「外来生物法」により,特定外来生物(第二次指定種)に指定さ
れております。したがって栽培、販売、譲渡などは禁止(許可を得れば可能)となって
います。キンミズヒキ(金水引):バラ科の多年草。名の由来はミズヒキに似ていて、花が金色。
果実にはトゲがあり、果実の散布に役立つ。ヤブミョウガ(藪茗荷):ツユクサ科の多年草。名の由来は葉がミョウガに似ているか
ら。春から夏ごろミョウガに似た葉を伸ばし、8~9月白い花を咲かせる。花には両性化
と雄花が着いています。舎人公園でも栽培予定。アメリカハナミズキ:ミズキ科。だれでも知っている身近な植物です。ワシントンに送ら
れた日本の桜が世界の名所の一つになっていますが、その桜のお礼として日本に送ら
れた(1915年)のがアメリカハナミズキ(花言葉は返礼)なのです。その原木の在り処が
調査されています。小石川植物園に一本あったのですが、数年前に枯死したそうです。
2003年ではかろうじて生きていた証拠写真があります。日比谷公園の古いハナミズキ
は、都立園芸高校の原木の子だそうです(原木ではない)。唯一残っている原木は都立
園芸高校にあります。しかし、40本も贈られてきたこともあり、その候補が幾つか挙げら
れています。アメリカミミカキグサ:タヌキモ科の多年生。食虫植物。捕虫嚢によりミジンコやプラン
クトンなどを捉える。湿地を好む極めて小さい植物で花が咲いて初めて見つけることが
できるくらいです。ミミカキグサの名の由来は花が終わったあとの姿が耳掻きに似てい
るから。小石川植物園の温室にアメリカミミカキグサという表示の付いた植物に出会い
ました。インターネットでアメリミミカキグサを検索してもヒットしません。ここでご紹介し
たアメリカミミカキグサが学問上どのような位置にあるのか興味があります。
観察会の風景:右端は綿引講師
センニンソウ:ときどき身近に見かける目立つ花。
オオハンゴンソウ:キクイモに似た野草。特定外来種に指定されている。
キンミズヒキ:ミズヒキとは異なりバラ科の野草。林地に多い。
ヤブミョウガ:葉がミョウガに似ている。ツユクサの仲間とは想像つかない。
アメリカハナミズキの枯死した株。ワシントン桜の返木(原木)。
アメリカミミカキグサ:小石川植物園でしか見られないのでは。
サルスベリの巧妙な花 [植物観察]
サルスベリ:ミソハギ科サルスベリ属。中国原産。名は幹がツルツルで、猿も登
れないところから。別名の百日紅(サルスベリ)は約100日間、紅花を咲かせる
から。花の色は淡紅色、紅色、白色、紫色などで枝先に群がって咲く。春の芽吹
きが極端に遅く、秋には一番早く落葉する変わり者。我が家のサルスベリも花が咲きだして10年になりますが、今年、何気なく見て
いると花の形が普通の花と違うことに気がつきました。花びら(一見萼状)は、
6つのV字形に裂けた萼(ガク)の裂け目から、糸状の花軸に、縮緬状で木くらげ
みたいな可憐な6個の花弁が特徴的です。受粉の仕組みが実に巧妙に出来ています。花の中心に花粉(葯)で黄色くな
った多数の短い雄シベ(38本)があり、その回りに何と不思議、長い6本の釣
り針形の雄シベ(紫色の葯)があるのです。つまり、2種類の雄シベを持つの
です。
38本の雄シベの中から、長くて太い釣り針形の雌シベが伸びています。この
長い雄シベと雌シベは共に先端が下向きになっていて、短い雄シベの葯
(花粉)と長い雄シベの葯・雌シベの柱頭が向かい合っているのです。
フリルで美しい花びらと短い雄シベの黄色い花粉で昆虫を引き寄せ蜜を
吸わせ、その間下向きの6本の雄シベの花粉が昆虫の背中付着し、これが
下向きのめしべに触れて受粉するのです。何と巧妙な構造でしょう。
炎天の 地上花あり 百日紅 高浜虚子
散れば咲き 散れば咲きして 百日紅 加賀千代女(かがのちよじょ)
サルスベリの花(集合花)
サルスベリの一つの花
上:しわしわの花びら(六枚)、下左:長い釣り針形をした雄シベ(6個)、
下右:花びらと長い雄シベを除去した状態(萼と短い雄シベと雌シベ。
短い雄シベ(38本)と雌シベ(中央の釣り針形)
アーティチョークの巨大な花 [植物観察]
アーティチョークの巨大な花
アーティチョーク:朝鮮薊(チョウセンアザミ)。キク科チョウセンアザミ属
の多年草で原産は朝鮮ではなく地中海沿岸。141年前にオランダから渡来。
つぼみは食用に。
舎人公園のボランティア花壇内の野草見本園に巨大なアーティチョークの
花が咲いています。
二年ほど前に、3号鉢に植えてあった枯れそうな小さな苗を50円で購入し、
わが家で育てて舎人公園に移植して約1.5年、写真のような見事な巨体と
なりました。草丈は人ほどあり、葉の直径は1.5メートルにも及ぶ特大なアー
ティチョークが大きなツボミ・花を沢山着けました。一番大きな花は、直径25㎝
あります。
つぼみの数を一個に絞って摘果したら、もっと大きな花になっていたでしょう。
しばらくは、花を楽しめそうです。
大きく育ったアーティチョーク(着蕾期):葉の幅は1.5mにもなりました。
大きなつぼみ(蕾)が着きました。間もなく開花です。
一個開花。花の直径は25㎝にもなりました。色々な昆虫が花に来ます。
真夜中のアーティチョークの神秘的な姿(撮影:佐藤健吾氏、上と同花)
比較的珍しい身近な花・植物 [植物観察]
比較的珍しい身近な花・植物
読売・日本テレビ文化センター北千住の講座“花とみどりをもっと知ろう”が都立木場公園で開催されました。この公園は、多くの外来植物(野草)が見られることで有名です。舎人公園にもミニ野草見本園が開設され、沢山の野草を観察することができます。今回は、身近で、注意すると見られる可能性のある花など、木場公園で撮影したものを紹介させていただきました。写真に説明をつけました。どうぞ、目を通して下さい。
なお、本講座は月一回(第二水曜日)のペースで開催され、約7年間継続しております。ご希望の方は、読売・日本テレビ文化センター北千住(電話03-3870-2061)にお問い合わせ下さい。
植物観察講座の風景:綿引講師(左から2番目)が説明中
ニホンハッカの不思議なランナー繁殖 [植物観察]
新しい冊子“足立区の野草”(A4版30頁、野草302種解説付き写真紹介)ができました。御入用希望の方は御一報下さい。実費で御送付致します。この他、既に発行済の“舎人公園観察ガイド、”舎人公園での探鳥“、”草花栽培カレンダー“も併せてご利用下さい。
ニホンハッカの不思議なランナー繁殖
ニホンハッカについて
ニホンハッカ:シソ科ハッカ属で宿根性の多年草ハッカ(メントールを葉の油腺に含む)に、二ホンハッカ(日本薄荷・Japanese peppermint)とセイヨウハッカ(西洋薄荷・peppermint)があり、ハーブとしての利用は、二ホンハッカの場合メントール含量が高く香りも少ないので不向きだが、セイヨウハッカは香りが良く向いています。栽培は古く1817年岡山が最初で、その後広島や北海道などで行われ、とくに、北見地方で盛んに生産されたそうです。メントールを含むので、昔からメグサ、メハリグサ、メザメグサなどの名称で呼ばれていますが、それは生の葉で目をこすると、目の中が涼しくなって目の病気が治りやすくなるということに起因しているそうです(平凡社世界大百科事典)。
ニホンハッカの不思議なランナー繁殖
ニホンハッカの繁殖法は、種子と地下茎で繁殖するように書かれています。本によってはランナー(走茎)を出して繁殖することが記載されています。ニホンハッカを増やす目的で、2008年10月、土を詰めたポットに挿し木したところ活着しました。11月半ば挿し穂の最上部(下から2節目)の節から腋芽が左右2個伸びてきました(2挿し穂とも)。外気温が低下してきたのでこの時点このポットを日当たりの良い室内に取り込みました。
では、ここでいう、不思議なランナーとはどんなものなのでしょう。写真に示しましたが、挿し穂(すでに発根している)の下から2番目『最上節』から腋芽が出現し、これが節と小葉を持った茎として発達し土の方向に伸張し、ついに土の表面に到達すると、そこで根を出し、その根は地中に進入し、普通の根としての機能を発揮するのです。これがここでいう不思議なランナーです。この奇妙な不思議なランナーの小さな葉を付けた節から新たに腋芽が生じ、茎となり、最初の不思議なランナーと異なる通常の地上茎の形態を取り(写真)、生育を続けるのであります。近いうちに立派に開花・結実することでしょう。
なぜ、不思議なランナーというのか?普通のランナーは根の近くの節から出てくるのですが、このように、高い節から出るランナーは珍しく、その原因は恐らく挿し木という特殊な条件のためにとった生活防衛策なのでしょう。
挿し穂の最上節から左右に出てきた不思議なランナー。y:挿し穂、x:不
思議なランナー。
不思議なランナーが土に向かって伸び、根を出した(R)。 上の写真を拡大。
不思議なランナー(x)の節(a,b)から出た普通の茎葉(a-c,b-c)。
ニホンハッカ(写真綿引さん):不思議なランナーから出た
茎葉が伸び8~9月になると立派な花を咲かせることでしょう。
虫こぶのお話 [植物観察]
身近なとこで虫こぶ(虫瘤、虫えい、gall:ゴール)を見つけることができます。よくある虫こぶの幾つかをご紹介いたします。
虫こぶとは:タマバチ、タマバエ、アリマキ(アブラムシ)などの昆虫が産卵・寄生すると、その刺激によって植物組織が異常に増殖し “こぶ”ができます。その発生メカニズムは不明のようです。虫こぶの中の幼虫はその組織を食べて成長し、飛び立ちます。日本では、虫こぶは569種の植物に約1400種類確認されております。虫こぶをつくる昆虫は実に沢山の種類があり、昆虫以外でもダニ類、線虫類、菌類、バクテリア、ウイルス、マイコプラズマが知れています。
★虫こぶの名前の付け方 : 植物名+つくられる場所+虫こぶの形状+フシ。
舎人公園などで観察された虫こぶ : 虫こぶ名:植物名(寄生昆虫名)。
エゴノネコアシ : エゴノキ(エゴノネコアシアブラムシの寄生)。
イスノキイチジクフシ : イスノキ(イスオオムネ・コムネアブラムシの寄生)。
イスノキハタマフシ : イスノキ(ヤノイスアブラムシの寄生)。
クヌギエダイガフシ : クヌギ(クヌギエダイガタマバチの寄生)。
クヌギハマルタマフシ : クヌギ(クヌギハマルタマバチの寄生)。
コナラメイガフシ : コナラ(ナライガタマバチの寄生)。
サクラハトサカフシ : サクラ(サクラフシアブラムシの寄生)。
シダレヤナギハオオコブフシ : シダレヤナギ(ヤナギコブハバチの寄生)。
ケヤキハフクロフシ : ケヤキ(ケヤキヒトスジワタムシ・フシアブラムシの寄生)。
ヌルデミミフシ : ヌルデ(ヌルデシロアブラムシの寄生)。
イヌツゲメタマフシ : イヌツゲ(イヌツゲタマバエの寄生)。
クリメコブズイフシ :クリ(クリタマバチの寄生)。
クズクキツトフシ : クズ(オジロアシナガゾウムシの寄生)。
エノキハトガリタマフシ : エノキ(エノキトガリタマバエの寄生)。
ノブドウミフクレフシ : ノブドウ(ノブドウミタマバエの寄生) などが発見されるかも? いや、もっと、もっと見つかるでしょう。
イスノキイチジクフシ (特大)
エゴノネコアシ(猫の脚裏)
クヌギエダイガフシ
クヌギハマルタフシ
イヌツゲメタマフシ
ケヤキハフクロフシ
シダレヤナギハオオコブフシ
サクラハトサカフシ
アカミタンポポを探そう [植物観察]
新しい冊子“足立区の野草”(A4版30頁、野草302種解説付き写真紹介)ができました。御入用希望の方は御一報下さい。実費で御送付致します。この他、既に発行済の“舎人公園観察ガイド、”舎人公園での探鳥“、”草花栽培カレンダー“も併せてご利用下さい。
アカミタンポポを探そう
カントウタンポポ、セイヨウタンポポ、シロバナタンポポは馴染みの深いタンポポですが、アカミタンポポは普段目にされることはほとんどないのでは?
それもそのはず、注意して見ないと見過ごすタンポポなのです。花や葉っぱを見てもカントウタンポポやセイヨウタンポポと区別できません。唯一つ見分けが出来るのは綿帽子(冠毛)をかぶった果実(痩果)の色です。幸いなことに、初春から秋まで花と果実が見られるので注意して見れば四つ葉のクローバーのように探せると思います。
このブログで、すでに触れましたが、外来種には、セイヨウタンポポ系とアカミタンポポ系があり、共にヨーロッパ原産で明治初期に日本に導入され、現在では、日本全国に分布しています。カントウタンポポは春開花しますが、セイヨウタンポポとアカミタンポポは春から秋まで長く咲き、しかも、受粉なしに種子が出来て繁殖(3倍体に起因する単為生殖・無融合生殖)するため繁殖力は旺盛です。
私の長く住んでいた隣の北区では20年以上前に確認されているのですが、足立区では舎人公園で昨年見つけました。もし、アカミタンポポを見つけられた方はご面倒でも、何処で発見されたかご一報いただけたら有り難いのですが。
アカミタンポポ(開花中):花や葉ではカントウ・セイヨウタンポポと区別困難です。
アカミタンポポの綿帽子(冠毛)と果実(痩果):果実が赤っぽいのがわかる。
アカミタンポポの果実は赤褐色で慣れたら直ぐにわかります。
カントウタンポポ、セイヨウタンポポおよび雑種タンポポの果実は淡褐色~黄土色。
冬目立つヤドリギ(宿木) [植物観察]
冬目立つヤドリギ(宿木)
ヤドリギ科ヤドリギ属
冬になると目立つ木、それはヤドリギではないでしょうか。今頃ケヤキなどの葉っぱの無い時、カラスの巣かな?と思って見過ごし易いのがヤドリギ。カラスノ巣かヤドリギかは肉眼では分かりにくいので、双眼鏡で見ると簡単に分かります。ヤドリギは落葉樹のケヤキ、エノキ、ブナ、サクラ、ミズナラ、コナラ、クリ、ヤマナシなど色々な植物に寄生する寄生植物です。寄生植物とは、他の植物に寄生根(種子から発芽し特殊な根)で相手植物(奇主、宿主)に食い込みの樹木から水分と養分を吸収横取りする憎き植物です。種子は鳥によって散布され、粘液を含んでいるので枝などにひっついて発芽して寄生するのです。寄生植物には、葉緑素を持ち光合成をして炭水化物を自分で合成する半寄生植物(水分と無機栄養を略奪)と葉緑素が無く光合成をしないですべての栄養を寄主から奪い取る完全寄生植物に区別されます。ヤドリギや後で述べるヒノキバヤドリギは半寄生植物で緑っぽい色をしています。以前このブログ(2008年5月5日)でも紹介させていただきましたが、ヤセウツボは完全寄生植物で全身茶色っぽい色をしています(葉緑素欠のため)。また、ススキなどに寄生するナンバンギセルもヤセウツボと同じ仲間です。ヤドリギやヒノキバヤドリギおよびヤセウツボなどの寄生植物に寄生された植物は、栄養分を奪い取られるため、徐々に衰弱していき、哀れにも時には枯死してしまいます。
ここで、ヒノキバヤドリギについてお話させていただきます。ツバキ科、モチノキ科、モクセイ科などの常緑樹に寄生しやすい変わり者です。今から6~7年前、舎人公園の片隅に成木のヤブツバキが10本ほど植えられて毎年きれいな花が咲いていました。よく見ると、ヒノキの葉のような形をした植物がヤブツバキの枝から生えていたのでした。あとでヒノキバヤドリギと分かりました。ヤドリギはよく見かけるのですが、ヒノキバヤドリギは大変珍しいので舎人公園の目玉になったのですが、残念なことに、日暮里ー舎人ライナーの車庫作りの犠牲になり無くなってしまったのです。なんとか、移植して保存していただければ良かったのですがボランティアの身分では力不足でした。いまでもヤブツバキは本公園に沢山生育しているのですが、ヒノキバヤドリギの寄生した固体は一個も見つかりません。
ケヤキに寄生したヤドリギ:果実着生、山中湖で撮影
ケヤキに寄生したヤドリギ:ほとんどのケヤキに見られる。山中湖で撮影
ヤマナシに寄生したヤドリギ:小石川植物園で撮影
ヤブツバキに寄生したヒノキバヤドリギ:舎人公園にて(現在は見られない)
ヤブツバキに寄生したヒノキバヤドリギ:舎人公園にて(現在は見られない)
図鑑にない野草 [植物観察]
図鑑にない野草
恒例の読売文化センターの講座“花と緑をもっと知ろう”は、開始の2003年10月8日の第一回(舎人公園)以来53回を迎え(年10回の講座)6年目となりました。このように長く続くとは夢にも思いませんでした。これも、講師の綿引寿三郎さんの博識と説明のうまさによるところです。私の役はアシスタントで、いても、いなくても講座に支障はなく、自由気ままに楽しませていただいております。今月11日にこの講座が小石川植物園で開催されました。今回は、図鑑にほとんど掲載されていない普段目にすることのない野草3種を紹介させていただきました。
1)チャボタイゲキ(矮鶏大戟) : トウダイグサ科、トウダイグサ属の一年草
小石川植物園には下の写真のように群落を形成していました。この寒い時期でも花は咲いていました。類似の野草として舎人公園にはトウダイグサ〈燈台草〉がありますが、花は似ており杯状花序(燈台状)となっており、大変珍しい形をしています。漢字の名前も難しいですが、その由来は矮鶏(チャボ)は小さいことの意味で、大戟(たいげき)」は武器のホコで、中国で灯台草(とうだいぐさ) のことを指すようです。綿引寿三郎さんの植物図鑑(現在6791種掲載)を引用させていただくと次のような記述がありました。地中海沿岸地域原産の植物で、現在本州の関東以西から九州にかけて野生化している帰化植物。トウダイグサの仲間で、日本に自生するタカトウダイやナツトウダイなどに似ているが、ずっと小型である。自分も小石川植物園で初めて見かけた時、正体がわからなかった。最近帰化植物図鑑をみてようやく正体が判明した。自分の身近にも以外と知らない外国の植物が入り込んでいるのだなと改めて感じた。東京では今のところ小石川以外ではほとんど見かけないようだ。
2)コゴメイヌノフグリ(小米犬の陰嚢): ゴマノハグサ科、クワガタソウ属 の1~2年草
小石川植物園が1961年にヨーロッパとの種子交換で手に入れたものが最初のようで、下の写真のようにこの時期に園内でたくさん咲いており、気候風土が合うようです。真っ白な可愛くて小さな花を付けるので小米(コゴメ)、草はイヌノフグリ状でコゴメイヌノフグリと1995年に命名されたようです。因みに、小石川植物園には、和名の無い植物が多々見受けられます。葉はどこにでもあるフラサバソウに似ていますが茎などに毛が多く、花が白いので区別点できます。 小石川植物園独自の野草ともいえますが、最近は都内の逸出があるようです。イヌノフグリとは漢字で書けば、犬の陰嚢(ふぐり)。これは花後の果実が犬の陰嚢に似ているからですが、だれがこんな名前をつけたのでしょう。クワガタソウ属のオオイヌノフグリ、イヌノフグリ、タチイヌノフグリ、フラサバソウの果実(蒴果)はいずれも犬の陰嚢(ふぐり)に似ていますが、それも色々な形をしております。
3)ユキワリイチゲ(雪割一花):キンポウゲ科、イチリンソウ属の多年草
同じ仲間のキクザキイチゲ、アズマイチゲ、セツブンソウなどが早春に見られますが、ユキワリイチゲはそれらに先立って咲くそうです。なじみの深いイチリンソウ、ニリンソウも同じ仲間です。名前の由来は雪の残る早春に咲くから。
綿引さんの植物図鑑はjusa's Gardenまたはhttp://www.linkclub.or.jp/~jusa/で検索して下さい。
チャボタイゲキ:葉が赤く冬目立つ。花は小さく地味:2009年2月11日撮影。
チャボタイゲキ:このように群落を形成。ここでしか見られない光景でしょう。
コゴメイヌノフグリ:冬咲いているのが珍しい。葉はフラサバソウに似る。09年2月11日撮影。
コゴメイヌノフグリの蒴果・果実(フグリ)。大きさは数mm。
ユキワリイチゲ:2009年2月11日撮影
冬咲く花、ヤツデの開花の不思議 [植物観察]
冬咲く花、ヤツデの開花の不思議
私達がよく目にするヤツデ、冬咲く花で有名ですが、開花もそろそろ終わりとなりました。ところでこのヤツデとは実に不思議な花なのです。少し長い文書になりましたが読んで下さい。
ヤツデ : ウコギ科 Araliaceae、 ヤツデ属 Fatsia、 種ヤツデ F. japonica。ヤツデ属の学名Fatsiaは“八手”を“ハッシュ”と読んだものをあてたそうです。
花言葉 : 固い絆。日本原産のヤツデ(八手)は東北地方を北限とし、沖縄まで生育している常緑の低木で、アオキとともに日陰~半日陰~日当たりで育つ植物です。
名前の不思議
葉がヒトの手状に8つに分かれているからヤツデとした説があります。しかし、実際には8裂のものは少なくほとんどは9で7~11まであります。“八手” としたのは縁起をかついだものといわれています。八は末広がりから.縁起の良い数字とされています。一方、葉が多く分かれている(数が多い)ので八手とした説もあります(八百屋もその例)。ヤツデの葉は大きな掌状形で、魔物を追い払う力があると信じられ天狗の羽団扇とか鬼の手などとも言われ、昔から魔よけとして玄関付近の目につき易い所に植えられてきました。南天も似たような植え方がされています。ヤツデは有毒と考えられていたようですが,赤飯などのお供え物をヤツデの葉に盛り神に捧げる風習がありました。事実、ヤツデにはヤツデサポニンが含まれ、多く摂取すると有害ですが、少量ですと生薬に使われているくらいですから問題ないようです。
八ツ手咲きこの世ひととき華やぐか 中嶋 秀子
開花の不思議
ヤツデの花は虫媒花ですが、昆虫の少ない真冬に開花するので、受粉のため多くの昆虫を引き寄せる必要があるので、特別甘い蜜を蓄えています。集まってくる昆虫にはハナアブ、オオハナアブ、ミツバチ、オオクロバエ、キンバエなどがあり、冬というのに実に多種類の昆虫が真冬の陽だまりで盛んに蜜を吸っているのが観察されます。ヤツデは同じ花の受紛を避けるため、特別の仕組みを持っている植物として有名です。花は両性化(一つの花に雄シベと雌シベがある)ですが、普通の両性化(雄シベと雌シベが同時に熟し受粉)とは違うのです。ヤツデの花は開いたとき、花弁と雄シベが成熟して花粉がでますが、このとき雌シベは未熟のため昆虫がきて花粉を集めても受紛しません(雄性期:male stage)。中性期(無性期)の数日を経て、花弁と雄シベが落ちたのち、雌シベが成熟し(雌性期:female stage)他の花の花粉を付着した昆虫から花粉を受け取り受粉するのです。実に巧妙に雄シベと雌シベの成熟時期をずらして近親結婚を避けているのです。一見雄花と雌花が別々についているように見えますが、実は両性花なのです。
知名度の高い植物図鑑に、ヤツデは両性化と雄花を有すると書かれていますが、私は違和感があります。それは、ヤツデのどこに雄花があるのか見つけるのは容易ではありません。それもそのはず、雄花と称しているのは、花序の中で枝分かれ回数の多い小花序で、最後に咲く花が該当し、この花は、はじめに咲く花と同じで、花弁と雄シベが成熟して花粉をつくりますが、雄性期が終わると雌シベの成熟なしに枯れてしまうのです。つまり、雌シベのもとはあるのですが未熟なままで受粉することなく脱落するのです。雌シベが成熟しない花なので雄シベというのでしょうが、どうもすっきりしません。果実は春には黒く熟し、ヒヨドリなどに食べられ、その糞の中の種子起源のヤツデがいたるところに生えてきます。このような植物の増え方を私の故郷の鳥取弁で捨て生え(すてばえ)といいます。
ヤツデの葉は9つに割れているものが一番多いようです。
ヤツデの花:ミツバチが蜜を吸っているのが雄性期の花で花弁と雄シベガ良く発達している。
この時点で雌しべは未発達。
花弁と雄シベが脱落。5本の雌シベが発達した雌性期、蜜を出して他の花の花粉を着けた昆虫の受粉を待つ。自分の花粉では受精しない仕組み。
上のミツバチが蜜を吸っている花は雌性期の花(ほとんど受精している)。下の花は雄性期で花弁と雄シベが良く発達しており、他の花の受粉に使われる。
結実した花(青く丸い)と雌シベの発達なしに枯れて脱落している花(茶色っぽい花で、これを雄花というそうですが、私は受精しなかった両性化と言いたい)。
植物シモバシラの氷の華の芸術品 [植物観察]
植物シモバシラの氷の華の芸術品
舎人公園でことしもシソ科植物のシモバシラに立派な氷の華の芸術品が見られました。このところの朝の冷え込みが強く、昨日に続いて今朝もシモバシラの霜柱の芸術品を見ることができました。今朝の霜柱の氷は、昨日のものより一段と発達し見栄えが一層よくなりました。ここで、しばらくは観察できると思います。午前11時頃までは見られると思いますが、早かれば早いほどいいでしょう。観察場所は、舎人公園サービスセンター南東隣接地の雛壇花壇の中央付近下で看板が出ていますので直ぐ分かります。
シモバシラに霜柱(氷の芸術)が出来るメカニズムは、このブログの“舎人公園のシモバシラの霜柱”(2007年12月27日記)に記してありますのでご参照下さい。
シモバシラの霜柱(芸術品)の看板と観察場所:下の氷左が芸術品
シモバシラ(地上部の枯死した下部の茎)に出来た氷の華の芸術品
昨年より沢山できました。
芸術品を拡大してみました。綿菓子のようにふんわりとしています。
同じく拡大写真です。明日にはまた変わった芸術品が見れることでしょう。
“舎人公園のシモバシラの霜柱”(2007年12月27日記)と比べてみて下さい。
皇居東御苑の珍しい植物 [植物観察]
皇居東御苑の珍しい植物
今月11日、月一回の読売・日本テレビ文化センター講座“花と緑をもっと知ろう”が皇居で行われました。ここは、昭和43年から一般公開されるようになり、旧江戸城本丸などを整備されたもので、松の廊下や大奥の跡地なども含まれています。無料で一般公開されており、多くの方が訪れますが、とくに、外人さんが多いようです。この地には、都道府県の木が観察されます。ちなみに、私の出身地鳥取の木はダイセンキャラボクですが、大山では見られないような大木になっており、気温の差を感じました。冬にはシモバシラの霜柱が見られ(二の丸庭園)、春には梅林が人気の的だそうです。東御苑には、無数の植物が生育していますが、私にとって目に止まった植物数種を以下の写真とともに紹介させていただきました。時間があったら目を通して下さい。
講座の皆さん
イヌビワ : 役に立たないビワの意味でしょうが、実はクワ科のイチジクの仲間で、雌花の果嚢(かのう)はイチジクそっくりで、食べたことがあるのですがイチジクそのものです。ただし、雄花の果嚢は食えません。雌雄異株。雌シベも雄シベも多肉化しているので、花粉の媒介が出来るのはイチジクコバチの仲間だけだそうです。
シロダモ : 花と実が同じ枝に同居する変わり者です。理由は果実が熟すのに一年もかかるからですね。クスノキ科で赤く実が熟すのは珍しいそうです。シロダモの名は葉の裏が白い“タモ”の木に由来しているようです。この種子にはなんと油が30%も含まれ、燈油やローソクに利用したそうです。
シロバナタンポポ : 関東に少ないシロバナタンポポですが、冬咲いているのはこの地が暖かいからでしょう。カントウタンポポは春しか開花しないのですが、セイヨウタンポポ、アカミタンポポ、雑種タンポポは春から秋まで開花します。
タイミンタチバナ : 常緑小高木で、名は中国の明王朝に関連するようです。ヤブコウジ科でマンリョウ、カラタチバナやヤブコウジと同じ仲間でめでたい木です。ちなみに、一両(アリドウシ:アカネ科)、十両(ヤブコウジ)、百両(カラタチバナ)、千両(センリョウ:センリョウ科)、万両(マンリョウ)とありますが、これらは皆縁起のいい木です。
タチバナ : みかんの仲間で日本特産です。果実は酸っぱくて食えませんが香りがいいので皮を和え物に利用されるようです。万葉集にもでてくる柑橘で、カラタチとともに神社などに古くから植えられています。果実は小さく2-3㎝。
タラヨウ(1) : モチノキの仲間で葉はタイサンボクに似た形をしています。残念ながら舎人公園にはこの木がないのです。
タラヨウ(2) : 葉の裏を傷つけると黒く変色するので、字や絵を描くことができ、古くは便りの交換に使われたそうです。黒く変色するのは傷口から出たタンニンが酸化したためです。ハガキノ木ともいい、現在、郵便局では郵便の木に指定し、この葉に宛名と便りを書いて120円切手を貼ってポストに入れると郵便として扱ってくれるそうです(特殊郵便扱い)。写真に写っている葉に書いた字で、“タラヨウの葉の裏”の、裏の字が間違っています。すみません。
ツルドクダミ : 葉がドクダミに似ているから。タデ科のつる性の植物。中国原産で漢方薬として栽培されたものが野生化したようです。カラスのように髪を黒くする薬効があるらしいですよ?
足立区の野草(冊子)新規作成 [植物観察]
足立区の野草(冊子)新規発行
東京都足立区内の荒川周辺や舎人公園(都立)を中心に、同区内に生育している野草の永年にわたる調査結果を、ようやく新しい冊子としてまとめるはこびとなりました。今まで確認された主な野草の種類は344種(一部変種などを含み、現存しない種は除外)で、このうち約88%の301種を解説付きで写真に紹介できました(写真3,4)。作成に携わった人は、全員舎人公園ボランティア会員で、宮川 格(冊子、荒川の野草著者)、綿引寿三郎(読売・日本テレビ文化センター北千住、同京葉 : 講座 “花と緑をもっと知ろう” 講師、緑・花文化士)、戸張守裕(舎人公園ボランティア“みどりと鳥の会会長・植物愛好家)および津村昭人(読売・日本テレビ文化センター北千住、同京葉 : 講座 “花と緑をもっと知ろう” 講師)です。作品はA4版30頁で、内容は下の写真の目次(写真2)に示したとおりです。
この作品以外で、すでに発行されている冊子として以下のものがあります。
舎人公園観察ガイド : A4版30頁、舎人公園での探鳥 : B5版16頁、草花栽培カレンダー : A4版8頁 。
入手ご希望の方はご一報下さい(ただし有料となります)。なお、これらの冊子の見本は舎人公園サービスセンター、日比谷公園内・緑と水の市民カレッジ“みどりのⓘ(あい)プラザ”などに置かせていただいております。
冊子”足立区の野草”:表紙
冊子”足立区の野草”:目次
冊子”足立区の野草”:写真集の一例
冊子”足立区の野草”:別の写真集の一例(拡大)
冊子”足立区の野草”:内容の一例
冊子”足立区の野草”:内容の一例
生田緑地での植物観察 [植物観察]
神奈川県西生田緑地での秋の野草観察会
10月下旬、神奈川県の西生田緑地で植物観察会がありました。生物専門の先生の案内で約1時間散策しました。沢山の秋の野草が観察されました。もう、開花の終わっている種もありましたが、今なお沢山の植物が開花していました。主なものは、ヤマホトトギス、ミズヒキ(赤)、チカラシバ、イノコヅチ、ノコンギク、シロヨメナ、シラヤマギク、ヌスビトハギ、ノガリヤス、ヤクシソウ、ツリガネニンジン、ヒヨドリバナ、ヒヨドリジョウゴ、チジミザサ、アキノタムラソウ、キツネノマゴ、オニドコロ、トネアザミ、オオブタクサ、オニノゲシ、ヤマハギ、アキノキリンソウ、セイタカアワダチソウ、オオハナワラビなどです。
これらのうち、舎人公園では見られない幾つかを紹介させていただきました。
アキノキリンソウ(写真の黄色い花):秋に咲く代表的な野草でしたが、最近
セイタカアワダソウに追いやられ、なかなか見るころができなくなりました。
そのセイタカアワダソウも自家中毒のため減少してきています。
ピントが甘くすみません。
シロヨメナ:山林に生える野草で、類似のノコンギクやカントウヨメナは花
が淡青紫色です。キク科のシロヨメナはシソ科のシモバシラのように冬に
なると氷の芸術的な霜柱ができるようです。シモバシラの霜柱は本ブログ
で紹介されています。
ヌスビトハギ:なんと縁起でもない名前がつけられたことでしょう。これは、
実(豆果)の形を忍び足で歩く盗人の足の形に見立てたとか。豆果の表面
にカギ状の毛があり衣服にくっつく。写真の足跡みたいな小さな緑色の豆
のサヤが見えますか?みずらくてすみません。
ヒヨドリジョウゴ:ナス科の多年草で、鳥のヒヨドリが好んで実を食べることが
名前の由来とか。有毒植物だそうです。
オオブタクサ(キク科):ブタクサと同様に花粉症の原因になりきらわれも
のです。一年草ですが、大きいものは2m以上にもなり、まるで、木立のよう
になります。
ジョロウグモ:植物観察中このクモを見つけカメラにしました。
このころのジョロウグモのオスは、子供のように小さく巣の片隅に追いやら
れ、写真のメスのクモとは似ても似つかない姿です。
交尾はメスの脱皮直後や食事中に行なわれるそうです。それ以外では交尾
時にメスがオスを食べてしまう危険性があるためのようです。
世界一小さな花と巨大な花 [植物観察]
9月の読売・日本テレビ文化センター(北千住)講座“花と緑をもっと知ろう”がつくばの国立科学博物館つくば植物園で開催されました。
世界一小さな花
第一に目に留まったのがミジンコウキクサ(別名 仁丹藻)です。下に写真があります。
世界で最も小さい種子植物で、その花は世界最小と言われるそうです。植物体は根が無く、葉と茎の区別のない植物体(葉状体のみ)で、その大きさは、葉は1mm以下と小さく、重さは0.15gと軽いものです。花は0.1~0.2mmしかなく私の肉眼では見えないです。虫眼鏡で見たのですが、花は残念ながら見えませんでした。もっとも、開花そのものが、まれのようなので、きっと咲いていなかったのでしょう。いつか拡大鏡か顕微鏡で花の観察に挑戦してみようと思います。受粉のメカニズムはいまだに解明されていないようで、葉状体上の貝や昆虫あるいは風、雨などが推定されています。ミジンコウキクサそのものは特殊なものではなく、近くの水田、池沼等でウキクサと混じって生育している可能性があります。極めて小さいので直ぐ分かると思います。私はそのつもりですが、皆さんもトライして見てください。
巨大な花
第二に目に留まったのがヒスイカズラです。下に写真があります。 つる性のマメ科の植物で、温室では棚仕立てにして、フジのように花穂を垂らす観賞のされ方をしている。その花を観ると誰でもため息をもらすほど、観たこともない花色である。ヒスイカズラという名前もぴったりの印象を与える。 自分も初めて見たときは我が目を疑った。その色は写真では伝わらない。 ぜひその目で確かめて欲しいものである。春から初夏にかけて次々と咲くので、花期は長く楽しめる。最近では栽培している植物園も増えて、あちこちで花が見られるようになったが、専用の棚を作って間近で観賞できるところは少ないようだ。 最近は種苗業者の通販カタログなんかでも見かけることもあるが、家庭で育てるには大きすぎるような気がする。 大温室ならではの花である。誰か品種改良をして、鉢であんどん仕立てにして楽しめるわい性のものを作ってくれないだろうか?(綿引寿三郎さんの文章そのまま引用)。
観察会参加者、綿引講師は前列の男性、つくばにて
ミジンコウキクサ(4)、ウキクサ(1)、アオウキクサ(2)、イボウキイクサ(3)
小さく無数見られるのがミジンコウキクサです。ウキクサと比較するとその
大きさがよく分かりますね
ヒスイカズラの温室での生育状況
ヒスイカズラの巨大な花・花房は1m以上にもなるそうです(撮影綿引寿三郎)
ヒスイカズラの巨大な果実
植物の空気中窒素の固定 [植物観察]
植物の空気中窒素の固定
下の写真は隣の家から戴いた大豆〈枝豆〉の根粒です。畑から抜いたばかりのもので、根っこに数ミリメートルの粒(こぶ)状のものが見事に沢山くっついていました。これは昔からよく知られている根粒と呼ばれるもので、この中に根粒菌(バクテリアの一種:桿菌)という土壌微生物が住んでいます。この根粒菌は大気中の窒素をいとも簡単にアンモニアに変換し(窒素固定といいます)、植物の生育に欠かせない窒素を大豆に供給する働きをしているのです。根粒菌は逆に大豆から栄養を貰って生活しており、共に仲良く共生している〈共生菌〉のです。だから、マメ科植物は、窒素肥料をあまりやらなくても良く育つのです。大豆などで、窒素肥料を多くやると大切な根粒が着生しにくくなることが古くから知られています。この根粒菌は大豆以外のエンドウ、ソラマメ、インゲン、クローバー類、クズ、アカシア類、ハギ、エニシダ、ラッカセイ、ネムノキ、ヤハズソウなど極めて多くのマメ科植物に着生します。ご参考までに、マメ科以外で根粒植物が百種以上知られているそうです。一例としてヤマモモ属、ハンノキ属、グミ属、ソテツ属、コウヤマキ属、ドクウツギ属が身近にあります。これらのうち、ハンノキの根粒は拳大にもなるようです。
また、最近の発見として、サツマイモが痩せ地で育つ理由として、ツルに共生菌が共生していることが報告されています。イネやムギに遺伝子組み換え技術が導入され、根粒菌が形成され、空気中に存在する無尽蔵の窒素を有効利用できるようになれば、地球温暖化のみならずその経済効果は計り知れないものがあるでしょう。農水省〈独立行政法人〉の研究が期待されます。
大豆(枝豆)の根粒:直径数mm位。因みに、ムラサキツメクサの根粒はもっと小さいものでした。
マヤランの花を求めて [植物観察]
九日、読売文化センターの講座、花と緑のウォッチングが神代植物公園で開催されました。お目当てはマヤラン。マヤランは次のようなランだそうです。
マヤラン(摩耶蘭) :ラン科シュンラン属でシンビジュームやシュンランと同じ仲間。110年以上前に神戸市の摩耶山で発見され、その名にちなんで牧野富太郎博士が命名、関東以西の低山の落葉樹林内に生え、環境の変化で見ることも稀となった貴重な従属栄養性ラン(環境省レッドデータブックカテゴリー絶滅危惧1B類)だそうです。花期7~8月。マヤランは、葉が退化し菌類に寄生して生活する腐生植物で、ラン菌の助けで生育し、花を咲かせるために地上に現れるそうです。
写真1 はマヤランの花に感激?しているところ。写真2はマヤランの花。
写真1 マヤランの花を見て皆感激?熟知の綿引講師(写真後方)は無関心?
写真2 お目当てのマヤランの花。10~20株深大寺門近くで咲いていました。
次に目にとまったのがバラです。珍しいバラを紹介させていただきます。
1: ロサ・セリケア・ブテラカンタ
バラの花は5枚の花弁が基本ですが本種は4枚。このバラの最も美しいとされるのは花ではな(トゲ(棘)だそうです。確かに真っ赤な翼状の棘は一流でした。
写真3 ロサ・セリケア・ブテラカンタ
2:モーツアルト
小輪の花は一重、小さな花が大きな房をつくりその姿はバラとは思えませんでした。
写真4 モーツアルト
3:サンショウバラ
葉がサンショウに似ているからこのような名が。果実がザクロを思わせるおもしろいバラ。
写真5 サンショウバラ
4:グリーンローズ
緑色の花が咲くバラ。じつは、花に見える部分は花弁の変化した苞葉だそうです。
写真6 グリーンローズ